日本の経済学・経営学の実力を考える
みなさんは、テレビや新聞・雑誌で、日本企業、特に製造業について次のようなことが言われるのを耳にしたことはないでしょうか。
「技術はあるのです。あとはそれをいかに市場に出して行くのか、また利益につなげるのか、そこが今後の課題ですね」
かつてDRAMで世界市場の90%を握ったと言われる半導体産業の凋落のみならず、日本のお家芸と呼ばれるデジタル家電や家庭用情報端末――液晶テレビ、スマートフォン、タブレットPC等々――の市場で、日本企業は、韓国、台湾、中国企業の前に苦戦を強いられています。
そうしたなか、「成長戦略」「産業再生」などのキーワードの下に経済、経営への関心が高まっています。しかし、実は、世界的な基準で見た日本の経済学・経営学の研究力は決して高いものではありません。
これからそれを示すデータを示していきますが、国別で言えば、先頭グループからかなり遅れている状況です。このことは、実はまだそれほど知られていません。また、経済学・経営力の研究力など、多くの人にとっては、あまり関心がないことかもしれません。しかし、この研究力の低さを放置したままでは、日本経済、産業の再生はおぼつかないのでないか、と筆者は考えています。
そこでこの連載では、読者の皆さんに次のことを示したいと思っています。
1)産業競争力と経済学・経営学の研究力という、一見距離が離れているように見える両者が実は密接に関連していること。
2)経済学・経営学研究の低迷が「技術があるのに利益が上がらない」という状況をもたらし、日本企業が世界市場で苦戦する大きな要因となっていると考えられること。
3)企業が「ビジネスの研究」を行うことが、産業競争力強化につながること。そのために、文系の修士・博士を活用する余地があること。
以下の記述には、細かいランキングに話が及んだりして読みにくいところもあるかもしれませんが、最後までお付き合いいただければと思います。
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