比較対象に問題がある?
ここで、次のような疑問が頭をもたげるかもしれません。「化学(”Chemistry”)、材料科学(”Materials Science”)と経済・経営学を比べているが、化学と材料科学が高い数字となっているのは、それらが日本の得意分野だからで、他の理工系を含めるとそれほど大きな差にはならないのではないか」
この疑問に対しては、Scopusで示されている学術分野27のうち、医学・生物学系を除くいわゆる理工系の分野での国別被引用数の対米国比を見れば確認できます。理工系には”Chemistry”と”Materials Science”以外に8つの分野があります。それぞれについて、被引用数1位の米国との比率を以下に記します。
・Chemical Engineering 40%
・Computer Science 9.5%
・Earth and Planetary Sciences 12%
・Energy 36%
・Engineering 17%
・Environmental Science 9.5%
・Mathematics 13%
・Physics and Astronomy 34%
以上を見ると、”Business, Management and Accounting”の3.3%に比べて明らかに高い値となっています。また東アジア5カ国との順位比較を見ると(具体的な数字はここには記載しません)、“Computer Science”と“Engineering”で中国より順位が下になっていますが、他は全てアジアで1位となっています。その“Computer Science”と“Engineering”も、Self-citationを引いた値では中国を上回っていますから、実質的には全ての分野でアジア1位ということがいえます。やはり“Business, Management and Accounting”分野とは大きく事情が異なっています。
また、“Chemistry”や”Materials Science”では、研究機関別ランキングのなかに、産業総合研究所や科学技術振興機構、理化学研究所といった、数百人から数千人の研究者を擁し公的資金で運営される大規模な研究機関が登場していました。
これらの機関は、研究し、論文を書くことが大きなミッションの一つとなっています。国別ランキングに関しては、こうした大学以外の研究機関の有無が影響している可能性はないのでしょうか?
無料会員登録はこちら
ログインはこちら