第4回 日本の経営系研究者はバカなのか?

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論文の採択まで時間がかかるという問題はある

一方で、英語で論文を発表したいと思っていてもできないし、採択されないので、やむをえず日本語の論文誌に投稿しているという研究者もかなりの数いることでしょう。

 実際、海外の一流紙に論文を載せようと思うとかなりの時間がかかります。投稿してから採択されるまでに2年~3年かかるというのはザラです。超一流誌と呼ばれる雑誌は特にそうです。

 応用物理の世界では、原著論文で投稿から採択まではかかって1年、訂正が求められず一発採択の場合は3カ月と言うこともあります(筆者の場合、必ず英語の直しが求められたので、残念ながら3カ月でパスという経験はありません)。いわゆる速報に当たるレター誌であれば、1カ月程度で採択が決まる場合もあります。

 なお、博士課程後期の標準在籍期間は3年ですから、この間に海外一流紙に論文を載せようと思うと、入学直後の研究がまだ十分に始まっていない時期に論文を書いて投稿しなければならないという矛盾が生じます。

 ですので、博士の学位取得を目指している博士課程後期学生が一流欧文誌への投稿をためらうのには理解できる面があります。しかし、最近ではインターネットによる電子投稿が可能になり、この時間の問題も少しずつ緩和されてきています。

 筆者の研究室で昨年博士の学位を取得した学生の一人はScopusの“Business and International Management”, “Finance”, “Strategy and Management”の三つのサブ・カテゴリーで上位4分の1に入ると評価されている“Journal of International Management”に自らの研究成果を載せました。投稿してから採択までにかかった時間は10カ月(2回の改訂を含む)でした。トップ5に入るような超一流誌を除けば、1年以内に採択される良質の論文誌は増えてきています。ですから博士学生の人には、ぜひ一流の海外論文誌に投稿してほしいと思います。

 問題は、海外の学術雑誌に投稿しているのになかなか採択してもらえない場合です。筆者と筆者のゼミ生も海外の一流学術誌に論文を載せようと繰り返しチャレンジしていますが、なかなか採択してもらえません。

 それこそ研究の質の問題で、採択されないと言うことは要するにバカなんじゃないの?と言われそうです。筆者と筆者の研究室学生の場合は確かにそうかもしれませんが、数多い他の日本の研究者もそうなのでしょうか? 次回は、優れた論文の特徴と、企業と大学の連携について掘り下げいきたいと思います。

藤村 修三 東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授

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ふじむら しゅうぞう / Fujimura Syuzo

東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科教授
1955年生まれ。1978年千葉大学理学部物理学科卒。1993年千葉大学大学院自然科学研究科博士(工学)。1978~1998年富士通株式会社、株式会社富士通研究所勤務。半導体プロセスの研究・開発に従事。その間、千葉大学、武蔵工業大学非常勤講師。1998年米カリフォルニア州にてJLM Technologies設立に参加。
1999年ANNEAL Corp. (JLM Technologiesを改称) CTO. 2002~2008年一橋大学イノベーション研究センター寄付研究部門客員教授。2005年4月より現職。
1997年科学技術庁注目発明(半導体装置の製造装置及び半導体装置の製造方法)、2001年第1回日経BP BizTech 図書賞(『半導体立国ふたたび』日刊工業新聞社)、2010年東工大教育賞受賞。

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