第5回 研究能力を使いこなす企業は強い?! 前編

優れた論文はデータの質がいい

日本国内の学会などが発行している日本語の論文誌に載る論文と、海外一流紙に載る論文を比べると、確かに海外の論文誌に載る論文の方が平均的な質は優っているように感じます。論理性にも若干差があるように感じますが、最も異なると感じるのはデータの質です。

 アンケート調査にせよ、聞き取り調査にせよ、特に一流ジャーナルに掲載されている論文のものは、かゆいところに手が届くように説得力のある、切れ味の良いデータが示されている場合が多いように思います。研究をやっていない方からすれば、良いデータを採ることができるか否かは、それこそ研究のセンスではないか、良いデータを取れないのは研究能力がないのではないか、と思われるかもしれません。

 確かに能力の問題と言われてしまえばそれまでなのですが、そうした決定的なデータをいきなり取得できることは極めてまれです。ほとんどの場合、どのようなデータが得られれば決定的なことが言えるのかを明らかにするための地道な事前調査やデータ収集がかなり重要です。

 また、ビジネスの実証研究では、理系の実験系研究者のように、研究者が実験室で装置を動かして主体的にデータを採る、というようなことができません。ビジネスの研究での実証データの多くはアンケートやインタビューなど、相手があり、相手との信頼関係において取得可能となる相対的な情報です。ですから、アンケート回答者やインタビュイーの姿勢によりデータの質は左右されますし、そもそもアンケートやインタビューができないこともあります。

 日本では決定的なデータを取得する段階はもちろん、この前処理というか地ならしというか、研究の照準を合わせるための過程においてすらデータ取得に苦労することが多いように思います。具体的に言いますと、欧米の企業に比べて日本企業は秘密の領域が大きいようなのです。聞いてもなかなか答えてくれない、欧米なら出してくれるようなデータもなかなか出してくれない、というような困惑をしばしば耳にします。

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