藤井聡太の人気を将棋界が生かし切れてない訳 大スターを最大限に生かす経済効果を考える
高校2年生、17歳にして、第91期ヒューリック杯棋聖戦で「棋聖」を獲得し、その翌月には第61期王位戦を制して「王位」を獲得した藤井聡太2冠。閉塞感漂うコロナ禍の中で数少ない明るい話題といっていいだろう。
しかも、将棋という日本独自の世界で、前人未到の業績を日々更新している。まさにスーパースター誕生と言っていいかもしれない。
藤井2冠の活躍による将棋界の恩恵は極めて大きなものであり、それまでの地味で、一部の高齢者向けのマニアックな世界と思われていた将棋界が、一気にメジャーで注目を浴びる世界に変わってしまった。
スポーツ専門雑誌『Number』の特集にもなるような高校生スター棋士が現れたことは、少なくとも将棋界に計り知れない経済効果をもたらすと誰もが思うはずだ。
だが、将棋界はきちんとその「効果」を生かし切れているのだろうか……。
これまでも話題になったのは「扇子」や「クリアファイル」といったグッズ販売、ワイドショーなどで取り上げられる際に話題となる「勝負飯」くらいなものだ。2冠になってからも、棋聖戦での一戦で書いた「封じ手」がオークションにかけられて、高額で落札されたことが話題になったが、その金額も将棋の世界では画期的かもしれないが、プロのアスリートなどと比較するとまだまだ小さい。
なぜ、将棋の世界は藤井2冠という大スターを生み出した環境を生かせないのか……。その背景には、長年続いた将棋のタイトル戦を牛耳る大手新聞社などの体質と関係があるともいわれる。
藤井2冠という歴史に残るスターが話題になる中で、こうしたスターを巡る「経済効果」について考えてみたい。
将棋人口は700万人?空前の将棋ブームは来るのか?
ところで藤井2冠を巡る話題に入る前に、将棋界の現状についておさらいしておこう。そもそも「将棋人口」とはどの程度あるのだろうか。
15歳から79歳までが対象の『レジャー白書』(日本生産性本部)によると700万人(2018年)となっている。藤井聡太のように4歳から将棋を始める子どもが少なくないことを考えると、一説には「1000万人市場」とさえいわれる。
2016年の総務省の社会生活基本調査によると、10歳から75歳以上の「行動者率調査」では、将棋の行動者率は3.2%、363万3000人。社会生活基本調査というのは、簡単に言えば国民が自由な生活時間を何に費やしているのかを調べたもの。1976年の第1回調査以来、5年に1回の頻度で調査が行われている。
レジャー白書の数字と大きく異なるのは、将棋を指す機会の頻度はともかくとして、少なくとも駒の動かし方とか、ルールぐらいは知っているという人は非常に数多いといっていいだろう。
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