藤井聡太の人気を将棋界が生かし切れてない訳 大スターを最大限に生かす経済効果を考える
ちなみに、プロ野球球団はどんなに赤字になっても、その親会社は「広告費」として損失を処理できるという税制上の優遇制度がいまだに残っていることを知る人はあまりいない。「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」と題された、昭和29(1954)年8月10日付の通達に基づいたものだ。
一方、将棋には「7大タイトル」と呼ばれる以前からあるタイトル戦があるが、それらがすべて大手新聞社や通信社の主催になっている。
●名人戦……毎日新聞、朝日新聞
●王位戦……新聞三社連合(北海道新聞、中日新聞、西日本新聞)、神戸新聞、徳島新聞)
●王座戦……日経新聞
●棋王戦……共同通信
●王将戦……スポニチ、毎日新聞
●棋聖線……産経新聞
2015年からは、ここに「ドワンゴ」が主催する「叡王戦(えいおうせん)」が加わり、8大タイトルとも言われている。さらに、タイトル戦以外にも、朝日杯将棋オープン戦、銀河戦、NHK杯戦、将棋日本シリーズ、新人王戦、YAMADAチャレンジ杯、加古川清流戦、AbemaTVトーナメント、電王戦など一般公式戦が、年々徐々に増えつつある。
もともと日本将棋連盟は、「AI」との対局などさまざまなイベントを展開し将棋人口の増加につとめてきたが、それ以外にも1日に3局まで無料でインターネットやスマホで対局できる無料アプリ「将棋ウォーズ(HEROZ)」を公認している。幅広い参加者と自由に対局ができ、その成績によって日本将棋連盟公認の段や級を取得できる「段級位認定システム」が導入されている。
利用者数は、公称で360万人(2020年2月現在)。2014年の120万人から3倍に増えている。将棋好きにはたまらないアプリだが、持ち時間10分という高齢者を無視した運営法には批判もある。
プロスポーツを参考にすればもっとできることはある
藤井2冠の登場によって、将棋全体の人気度が高騰している中で、さらなる経済効果のアップを図るにはどうすればいいのか。むろん、現在のコロナ禍の中ではイベントなども限られてくるが、プロ野球やプロサッカーなどが実施するスポーツイベントなどを参考にすれば、もっとできることは多いはずだ。
藤井2冠の登場は、将棋界にとっては単なる天才棋士が現れただけではない。こうした世界では珍しいスターが誕生したととらえて、彼の存在を最大限に生かす方法を考える必要がある。それは、将棋をこれまで支えてきた大手新聞社など既存のスポンサーも含めた「大人」の仕事といえる。
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