藤井聡太の人気を将棋界が生かし切れてない訳 大スターを最大限に生かす経済効果を考える
例えば、2019年の賞金・対局料ランキング1位は豊島将之名人・竜王(当時)で7159万円(日本将棋連盟発表)、藤井七段(当時)は2108万円で9位となっている。この金額は、プロ野球選手やプロサッカー選手などと比べて、おそらく1ケタ違っているし、また海外と比べるとく2ケタ違っていると言っていい。
将棋界で、これまでの最高は、7冠を同時に保持した羽生善治九段が1億1900万円(2015年)だったとされる。昨年、日本人として初めて全英女子オープンで優勝した女子プロゴルファーの渋野日向子は、全英オープンの賞金だけで67万5000ドル(約7150万円)を獲得している。現実に、将棋の7大タイトル中、4つは賞金額が1000万円未満といわれる。
こうしたアスリートや棋士の賞金や収入というのは、その競技の市場規模や観客動員数、グッズなどの販売額、テレビの放映権料等よって賄われる。市場規模が大きく、観客動員能力が高く、高額な放映権料などが期待できれば、アスリートやプレーヤーの収入も高くなる。
まさに経済効果の高い競技ほど、その競技者にも高い報酬を支払うことができるわけだが、観客動員数とか放映権料といったものはアスリートやプレーヤーの頑張りだけではどうしようもない部分が多く、その競技の運営者側に大きな責任がある。
日本では、アスリートやプレーヤーに支払う報酬は、海外に比べると少ないといった批判が以前からあった。アスリートやプレーヤーの経済効果を最大限に発揮できていないのではないか、という指摘があるのも頷けるわけだ。
経済効果の計算方法とは?
そもそも、経済効果は正確には「直接効果」と「波及効果」に分かれる。直接効果とは、例えば藤井2冠が大きな会場で対局を行い、その会場に数多くの観客が押し寄せた場合、そのチケットの売り上げなどが相当する。キャラクターグッズなどの販売も直接効果といっていいだろう。
一方で、その入場者の交通費や報道機関の交通費、飲食代、雑費等は波及効果になる。要するに、将棋界の経済効果を計算するときには、将棋の世界だけの計算ではダメで、それに付随するさまざまな産業や企業の経済波及効果も計らなければならないということだ。
こうした経済波及効果を計るものの1つとして、総務省が5年ごとに作成・公表している「産業関連表」がある。これに基づいて経済波及効果を算出することになっている。詳細は総務省のホームページにも出ているが、専門家でなくとも経済効果の概算を算出できるようになっている。
もっとも、経済効果の算出方法は同じ事例でも波及効果をどこまで考えるかによって試算の結果は大きく異なってくる。また総務省の作業管理表は5年に1回しか作成されないために、タイムラグが発生する場合もある。
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