それだけではない。07年夏以降は、台数に比べて金額の落ち込みが顕著だ。これは、円高の影響である。円ドルレートは、6、7月頃の1ドル=123円程度から、07年末には113円程度に、08年3月には97円にまでなった。そして、株価は為替レートが円高になるのとほぼ並行して下落したのである。なぜこのように急速な円高が進行したのか?
自動車販売台数の減少も円高も、一見したところ、アメリカのヘッジファンド破綻とは関係のない現象だ。しかし、いずれも日本経済に甚大な影響を与える重大な問題である。それがすでにこの段階において発生していたのである。
日本では、経済危機が深刻化したのは08年9月のリーマンショック以降だとされることが多い。それはそのとおりであり、日本の輸出が全体として落ち込むのは、09年秋以降である。しかし、変化はすでにその2年前から始まっていたのだ。
そして07年7月初めから年末までに、ダウ平均株価は2%しか下落しなかったが、日経平均株価は約16%下落した。日本経済が大打撃を受けることを、株式市場はこの時点ですでに予測していたことになる。
(週刊東洋経済10年2月20日号)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。
(写真:今井康一)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら