この2月に、四代目桂文我は壮大な事業をスタートさせた。
「桂文我上方落語全集」(パンローリング社)の刊行だ。文我は2005年から大阪市東成区玉造で、毎月「猫間川寄席」を開催している。ここですでに500席以上の落語を口演しているが、その速記本と、ライブ口演のCDの第1巻を同時発売したのだ。
上方落語のスタンダードな演目から、誰もやらない珍品、さらに文我が発掘した演目、講釈ネタ、新作まで。何巻までと見通しは公表していないが、数十巻に至ると思われる。
とくに重要なのは、速記本に記された一つひとつの落語の解説だろう。貴重な図版なども掲載し、噺の原典や先人の演出なども紹介している。まさに大師匠桂米朝の「上方落語ノート」を継承する大事業だといえよう。
新型コロナウイルスによって、落語家は活動の場を奪われた。しかし、文我は独自の考え方を持っている。
「無観客で、自らの落語を撮影して、ネットなどで流しても、あまり効果があるとは思いません。落語を画面で見た場合、お客様の笑い声が入っていないと、どこが面白いのかわからない部分も多く、演者のいいところが1つも出ないでしょう。
また、フェイスシールドなどをして、落語を演じたとしても、創作落語以外は、功を奏さないと思います。つまり、今の環境で、できるかぎり普通の状況で聞いていただけることを考えたほうがいいでしょう。不自然なことでもして落語を演じなければ忘れられるという芸ならば、消えても仕方ないと思いますし、それが自然淘汰だと思います。あくまでも落語は、できるだけ安全な環境で、普通に聞いていただいてこそ生きる芸だと思います」
1960年8月15日 三重県松阪市生まれ。
1979年3月 二代目桂枝雀に入門。桂雀司を名乗る。
1983年「第4回ABC落語漫才新人コンクール」審査員奨励賞
1991年「第6回NHK新人演芸大賞」優秀賞
1994年「第58回国立演芸場花形演芸会」金賞
1995年 四代目桂文我を襲名
1995年「第15回国立演芸場花形演芸会」大賞
1996年「国立演芸場花形演芸会」金賞
1996年「第13回大阪市咲くやこの花賞」
1997年「国立演芸場花形演芸会」金賞
1999年「国立演芸場花形演芸会」金賞
2003年「芸術選奨新人賞」
2009年「第64回文化庁芸術祭」優秀賞
本人談:「先代文我師匠が使っておられた出囃子です」
演じたことがある演題は700を超えるが、本人は「紺田屋」「占い八百屋」を挙げた。
〇公演予定
・8月23日 国立文楽劇場小ホール
午前11時開演:桂文我の「おやこ寄席」 桂文我「おしりつねり」ほか
午後1時30分開演:桂文我の落語アカデミー 桂文我「外法頭」 噺家と講釈師が演じる見世物や大道芸
午後5時30分開演:旭堂南海 桂文我 二人会 旭堂南海「違袖音吉」「木村長門守重成の最後」 桂文我「牡丹燈籠」「大黒の読切」
・8月29日 横浜にぎわい座
午前11時30分開演:桂文我の「おやこ寄席」 桂文我「平林」「もぐらどろぼう」ほか 座談会 長野ヒデ子 ささめやゆき 桂文我
午後2時30分開演:桂文我独演会 桂文我「怪談 市川堤」「音曲質屋」
・9月12日 京都府立文化芸術会館
午後1時と午後5時30分開演:さァ、やりまひょか! 桂文我の「プレミア落語会」 桂文我「そってん芝居」「音曲質屋」「応挙の幽霊」「浮かれの屑より」 爆笑大喜利 上方寄席囃子 狂喜乱舞!噺家舞踊
・9月28日 松阪コミュニティセンター
午後6時30分開演:桂文我の「古事記」を語る落語会 桂文我「古事記 その九」ほか ゲスト:林家正雀「名月若松城」 対談 本居宣長記念館名誉館長 吉田悦之 桂文我
※ おやこ寄席は小学生以上、他の会は中学生以上が対象で年齢の満たない人は入場不可。各イベントの詳細については主催者にお問い合わせください。
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