立川志らく「弟子降格」批判では見えない本質 外野から「パワハラ」とくさすのは無粋である

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先月、自身の弟子全員を「前座に降格」させた落語家の立川志らく師匠。落語界にとどまらずテレビ界にも及ぶ彼の魅力や、そのあり方を説く(写真:日刊スポーツ)

落語家の立川志らくさんが、二つ目の弟子たちを全員、前座に降格させたことが話題になっています。

東京の落語界では「真打ち」「二つ目」「前座」という階級があります。入門したばかりの弟子は、まずは「前座」として師匠の身のまわりの世話などの雑用をすることになります。修業を重ねて一人前だと認められると「二つ目」に昇進して、雑務からは解放されます。さらに実力を認められて「真打ち」に昇進すると、自分で弟子を取ることも認められます。昇進させるかどうかは師匠の一存で決められます。

基本的には前座から二つ目、二つ目から真打ちという昇進ルートは一方通行であり、降格することはめったにありません。志らくさんが数多く抱えている二つ目の弟子を全員降格処分にしたことは、落語界では異例のことだと言えるでしょう。

「異例の降格処分」の理由

志らくさんが弟子たちを降格させた理由は、彼が主宰する劇団「下町ダニーローズ」の舞台稽古に彼らが一度も来なかったからです。舞台の裏方を手伝ってほしいわけではなく、弟子ならば師匠のやっていることに興味を持つのが当然であるはず。それなのに自ら稽古に足を運ぼうとしないことに不満を漏らしたのです。

志らくさんがこの経緯を逐一ツイッターで発信していたため、それがネットニュースなどでも盛んに取り上げられ、「パワハラだ」などと志らくさんを非難する人もいるようです。

先月21日、立川志らく師匠がツイッターで弟子の降格について発言したことが話題となった(写真:ツイッターより)

個人的には、そのような非難は的を射ていないと思います。師匠と弟子という特殊な関係において、この程度のことがパワハラに該当するはずはありません。

そもそも落語の世界に入門する人は、師匠に憧れて、師匠の芸を盗むために自ら希望して弟子入りをしているのです。「弟子になってください」と頼み込んで弟子を抱える師匠はいません。みんな弟子のほうから頭を下げて師匠のもとに仕えているのです。

いわば、師匠と弟子というのは恋愛関係にあるカップルのようなもの。相手のことを本当に嫌だと思ったなら、自ら別れを告げればいいだけの話です。志らくさんの弟子に対する扱いに不満を述べる人は、他人の恋愛に口を挟むのと同じくらい無粋なことをしているのではないでしょうか。

志らくさんはツイッターで時事問題などに関しても自分の意見を積極的に発信していますし、『ひるおび!』(TBS系)でもコメンテーターを務めています。世の中の常識に縛られずに、自分の意見を堂々と述べる志らくさんは、しばしばネットニュースの題材にもなっています。その歯に衣着せぬ主張に対して違和感を感じたり、批判をしたりする人もいるようですが、志らくさん本人はまったく意に介していません。

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