一方、機内で感染者が触れた部分についてはどうだろうか。2015年、アメリカの旅行情報サイト「Travelmath.com」が微生物専門家の協力を得て、アメリカ国内の5空港と機内での細菌数の調査を行った。その結果、単位面積当たりの細菌数が最も多かったのは折り畳みトレイ(1平方インチ当たりの平均で2155)だった。
これについで多かったのが空港の水飲み機の押しボタン(1240)、座席の上にあるエアコンの吹き出し口(285)、トイレの流し用のボタン(265)、シードベルトの金具(230)、トイレの扉のロック部(70)となった。ちなみに家のトイレの便座が172、携帯電話が27だった。
いずれにも共通するのが不特定多数の人が手を使って操作する部分だということである。これらに一切触れないというわけにはいかないため、トレイを触った後にはきちんと手をふく、トイレの流しやロック部は、トイレ内にあるペーパーを使って操作して、トイレを出るときに破棄するといった具合に自衛するしかない。
また、飛行機が本格的な消毒作業が行えるのは空港に停泊しているとき。短いターンアラウンドでは、ゴミを捨てるなどの最低限の清掃しかできない。そのため、早朝のフライトが最も清潔で安全といえるだろう。
セキュリティゲートのトレイも危険
なお、2018年にイギリスの『バイオメド・セントラル』という感染症に関する雑誌が発表した内容によれば、フィンランドのヘルシンキ空港で調査した結果、セキュリティゲートで荷物を置くトレイのうち、半分には呼吸器感染を引き起こす細菌がついており、ライノウイルスとよばれるウイルスもサンプルの半分から検出されている。これらのトレイを触らないというわけにはいかないので、トレイに触れた後はできるだけ早く手洗いをすることなどで予防したい。
2004年にカナダのヴィクトリア大学の教授が発表した論文によれば、機内で風邪に感染する確率は、陸上での日常生活の約113倍におよぶ可能性があるという。機内は乾燥し、ロングフライトでは時差が生じるなど、身体にさまざまなストレスを与えるのは事実。機内はコロナの感染リスク以前に、もともと身体にとって過酷な環境ではあるといえる。
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