日本航空やスカイマークが一時期導入し、現在もデルタ航空などが実施している3席の中央席の予約をとらずに空けることは、感染対策としてどのくらい効果的なのだろうか。マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院のアーノルド・バーネット教授(統計学)が2020年7月に投稿した論文(未査読)によれば、飛行機が満席だと仮定した場合、すぐ近くの乗客から感染するリスクは4300分の1。
一方で中央席を空席にした場合、7700分の1まで下がるという。つまりリスクは40%ほど軽減される(その代わり満席と比較すると、乗客1人当たりの運航コストは50%跳ね上がる)。
では、前後の席への感染リスクはどうだろうか。世界保健機関(WHO)は、感染者の列とその前後2列の計5列の座席に一定の感染リスクがあるとしている。片側3席ずつ、通路が1つしかない旅客機で満席の場合、最大では計30席がその対象となる。
窓側の席は感染リスクが低い?
そのほか、アメリカのエモリー大学で2018年に発表された論文によれば、窓側で最前部の座席の乗客の感染リスクが最も低い。これは、トイレに行くために人が通る可能性が低いことによるもののようだ(前方にトイレがない機体の場合)。加えて最後尾の座席であれば、後ろの乗客から飛沫を浴びる可能性はないので、最後尾の窓側も選択肢としてはありうる。
もっとも多くの民間航空機の機内では、病院の手術室の空調設備にも使用されている高性能微粒子(HEPA)フィルターを通じ、約2~3分おきに空気を循環させている。
そのため「感染症の発生は空気感染をする結核などでも最小限に抑えられる。近く(特にすぐ後ろの席など)で、よほど大きな声でしゃべる人がいない限りはどの席でもそれほど感染リスクは変わらないのではないか。機内や電車内では、飛沫感染より接触感染のリスクのほうが高いと思われる」と水野氏はいう。座席の位置よりも、自分の座席周辺の消毒などに気をつけたほうがリスクを抑える効果は高そうだ。
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