日本のオンライン教育があまりにもお粗末な訳 世界に比べ導入遅れ目立ち、教育格差も広がる

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要は、日本人の意識がいまだにインターネット社会に移行しておらず、紙と電話の時代にとどまっているということにあるのではないでしょうか?

「オンライン教育を行うインフラがない」とか、「セキュリティーの問題がある」と言うのですが、港区がやったようにYouTubeで動画を公開することなら、今や小学生でもできます。

「教員にノウハウがない」と言うのですが、オンライン教育は「ノウハウが必要」というように技術的に高度なものではありません。

要はやる気があるかどうか、熱意があるかどうかです。

文部科学省のネット環境も整備してほしい

文部科学省は、7月10日、「2019年度文部科学白書」を公表し、全国の学校や児童生徒のネット環境を整える「GIGAスクール構想」を加速するとしました。

この構想は昨年末に打ち出されたもので、小中学生に1人1台のデジタル端末を整備することを目標にしています。

一斉休校を受けて、目標達成の時期を2023年度から今年度中に前倒しすることを決定。新型コロナ対策の補正予算に2292億円を盛り込みました。

しかし、PC整備の予算を確保すれば、それで問題が解決できるとは思えません。

第1に、なぜ公的な補助がないと機器が整備できないのでしょうか? すでに述べたように、日本の1人当たり所得は、PCが買えないほど低いとは思えません。

第2に、1度機器を購入すれば済むわけではありません。維持やサポートが必要です。通信費も必要になります。これらについても、国が補助することになるのでしょうか?

第3に、単位認定の仕組みも、オンライン授業を想定したものになっていません。例えば、学校教育法施行規則は、通信制を除く高校においてオンラインで取得できる単位を、全課程の修了要件の5割弱と定めています。

要は、上で述べたように、関係者にやる気があるかどうかではないでしょうか?

ところで、各省庁の白書は、普通は公表されればウェブで全文が読めます。ところが、上記の白書については、簡単な「概要」が公表されているだけで、全文はウェブでは読めません。「令和元年度文部科学白書の公表について」という発表文には、「令和2年7月下旬 刊行予定」と書いてあるだけです。

学校のネット環境を整えることも重要ですが、文部科学省のネット環境も整備してほしいものです。

野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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