怒りすぎてすべてを失う恐れあり 第5回 「数値化テクニック」で怒りのサイズを知ろう

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身近にいる大切な人を傷つけていないか

その他、怒りの感情には「身近なところへ向けやすい」という性質がある。怒りが身近なところへ向かいやすい理由は、「身近なところにいる人は、コントロールしやすい」という思い込みがあるからだ。

 例えば、政治や経済などに対する不満は、自分の力ではどうにもならないと簡単にあきらめるもので、実際に抗議行動などをしにくいものだが、自分の家族や職場の部下などに対しては、要望や理想を怒りの感情と共に強くぶつけてしまいがちである。

 ある休日、虫の居所の悪い妻が、テレビばかり観ている夫に対し、「ゴロゴロしているぐらいだったら、お風呂掃除くらいしてよ」と責め立てることがある。夫は夫で、翌日会社でちょっとした失敗をした部下に「なんでお前はダメなんだ!」と腹いせのような叱責をすることがある。

 では、腹の虫が収まらなくなった部下はどのような行動をとるだろう? 恋人に当たりちらすかもしれない。こうして、怒りは身近なところから連鎖していく。まさに負の連鎖だ。 

 怒りによって、自分の身近にいる最も大切な人を傷つけないようにしよう。そのためには、「6秒数えて」冷静になり、自分の今の怒りの状態を「点数化」しよう。点数化したら、怒りの状態に応じた「正確な表現」を「ボキャブラリー化」しておきたい。怒りは、ONかOFFだけでないこと、「キレル or キレナイ」だけでないことを意味する。

「キレタ、スイッチオン」で、「制御不能な怒り」を繰り返していては、いつか取り返しのつかない大失敗をする。「キレル」以外の怒りのボキャブラリーをたくさん知っておくことは、強く怒りすぎない冷静な判断を導くだろう。

 ピタゴラスは、「怒りは無謀をもって始まり、後悔をもって終わる」と述べている。無謀な怒りで深く後悔しないよう、自分の怒りレベルを分別できるようにしておきたい。詳しくは、拙著パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門をご一読いただきたい。

小林 浩志 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター

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こばやし こうじ / Kobayashi Koji

 

青山学院大学大学院法学研究科修了(法学修士)。
横浜市戸塚区で社会保険労務士・行政書士の事務所を経営する傍ら、社会人大学院でパワーハラスメントの法的・実務的対策を研究。パワハラ防止策の有効なツールとしてのアンガーマネジメントを数多くの企業、学校、病院等へ紹介している。
・特定社会保険労務士、行政書士、第一種衛生管理者
・公益財団法人21世紀職業財団認定セクハラパワハラ防止コンサルタント(客員講師)
・一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター
・日本スポーツ法学会会員
著書に『パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)、『現場監督のための 早わかり労働安全衛生法』(共著、東洋経済新報社)などがある。

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