怒りすぎてすべてを失う恐れあり 第5回 「数値化テクニック」で怒りのサイズを知ろう

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自分の怒りを点数化してみる

第2回で、ディレイする(反応を遅らせる)アンガーマネジメント・テクニックについて述べた。カチンときたら、数を6秒数える。怒りのピークは最大でも6秒と言われ、6秒間だけでも違うところへ意識を飛ばすことで、衝動に任せ、取り返しのつかなくなるような言動を回避するのである。それとあわせて活用したいのが「スケール(点数化する)テクニック」だ。

 スケールテクニックとは、「10点満点」で、自分の怒りの強さを点数化し、その時々の怒りを客観視する対処術である。点数は自分の基準で決める。気温のように絶対値ではない。怒りを感じ、点数をつける際は「だいたい3点ぐらいかな」といったようにアバウトで構わない。ただ、ある程度の標準化をしたほうが、後で客観的に振り返れるので、各点数ごとの状態を自分で決めておくことをお勧めする。

 その際にヒントになるのが、「怒りのボキャブラリー」だ。10点満点で、穏やかな状態を0点、人生最大級の制御不能な怒りを10点とし、怒りを感じるたびに点数をつけていく。たとえば「3点 不愉快」、「5点 憤慨」など、各点数に応じた怒りのボキャブラリーを決めておくと、正確に点数化しやすくなる。

   そして、怒るたびに、その点数を手帳などに記録してほしい。なぜなら、記録することで点数のつけ方が安定してくるからだ。例えば、
 「電車の中で足を踏まれたのに謝罪がなかった……3点」
 「ランチで注文した料理が出てくるのが遅い……この前よりムカついていないから2点だな」
のような感覚だ。

 冒頭に、電車の駅のホームから男性が突き落とされた事件について述べた。ちょっと注意をされたことで、制御不能な「10点」の怒りをぶつけていたら、周囲の人はたまらないし、自分自身も怒りを契機に大きなものを失う。5分で忘れるような小さな怒りなら「1点」とし、適当な対処術を使って、すぐに「心のコップ(第4回参照)」から水を抜いてしまおう。

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