アフリカで学んだ、超・飛び込み営業術
優良案件を探す銀行員――はたから見れば産業スパイ?

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先進国にいると、ついおろそかになりがちな営業の基本、それは、飛び込み営業かもしれません(写真は、先日、筆者が飛び込み営業に行ったタンザニア北部のサイザル麻農場)

コートジボワールの養鶏企業、ナイジェリアのファストフード・チェーン、ザンビアの畜産企業、リベリアのゴム農園、などなど……。アフリカに来て約5年になりますが、銀行員として、このような10件以上の投資案件を手掛けてきました。

そうお話すると、外部の方からよく聞かれるのが、「なるほど、面白そうな会社に投資をしていますね。で、これらの投資案件はどのように発掘するのですか?」ということです。

その答えは、一言、「こっちからがんがん、“ドブ板営業”してます」です。

とはいえ、このドブ板スタイルにたどり着くまでには、それなりの紆余曲折がありました。そもそも、かつての僕は、地道なドブ板営業とは真逆のスタイルを取る人間でしたから、個人的にはそれは大きなキャラチェンジだったのです。

西アフリカに赴任して、最初に上司から頼まれた仕事が、投資を受けたい、といういろいろな企業からの問い合わせへの対応でした。20社くらいの企業からの依頼メールをどさっと渡されて、「今まで忙しくて見る時間がなかったから、ヨースケ君、全部見て企業側に回答しておいてね」と言われました。

これらの依頼を詳しく見てみると、どうも難しい案件が多く、どこの銀行からもおカネを借りられなくて、最後の頼みの綱でIFC(世界銀行)に来ました、というものが多かったのです。アフリカの人々も、国際機関ということで、難しいプロジェクトに「援助」してくれそう、あまり審査をされずにおカネを借りれそう、といったイメージがあるようです。

たとえば、融資依頼のファイルの中に、西アフリカのある国で、チョコレート工場を作りたい、という案件がありました。確かにその国は、チョコレートの原料になるカカオ豆の世界有数の産地で、「カカオを、豆のまま輸出せず、チョコレートにまで加工したい!」という思いには共感できます。しかし、その工場を建てたいという人は、チョコレート加工はおろか、食品加工の経験すらまったくない人でした。

前回の記事で書きましたが、発展途上国であるアフリカは物価やコストが安そうに思われるのですが、それは大間違い。インフラ不足や高い電気代で苦しむ日常です。そうした状況の国で、欧米の会社よりも安い加工費で作れるのですか? 地元向けに売るのなら、地元にチョコレートを食べる人がどのくらいいるのですか? などの基本的な質問に答えることもできません。それでは、いくらなんでも、おカネを貸すことはできません。

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