意外?アフリカでは「日本人」流が役に立つ 口承文化で書類がない!そのピンチに僕は……

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アフリカ市場が熱い――日本でそう言われ始めてから、数年が経ちます。しかし、現地のリアルな情報はほとんど届かず、今でも幻の市場だと思っている人が多いのではないでしょうか。
そもそも日本企業がほとんど進出しないような途上国で、ビジネスを成功させるにはどうしたらいいのか?この連載では、外資系金融でのキャリアを捨てて、アフリカの現地に飛び込んだ銀行員が、アフリカビジネスの現場模様について語ります。
ビジネスには必須のはずの書類を作る習慣がない、口承文化の西アフリカの国々。いったい、どうやってこのピンチを乗り切ったのか(写真は、アフリカ・マリの市場の様子)

 銀行員がどこかの会社におカネを貸す際に、必ず「出してください!」と言うものは何だと思いますか? そう、決算書などの財務データです。

ところが西アフリカでは、詳細なデータどころか、基本的な情報ですら会社から出て来ない! もともと書面で記録に残す習慣のない口承文化の地域、西アフリカ。そうした場合に、どうやって情報を集めるのか。今回は文化的な話を交えながら掘り下げてみたいと思います。

会社の決算書すら存在しない!?

世界銀行に入行して西アフリカのセネガルに赴任した僕が、最初に担当した仕事。それは、マリ人の起業家が経営する大手飲料メーカーにおカネを貸す、という案件でした。マリは、セネガルの隣の内陸国。世界で最も貧しい国のひとつです。

融資の依頼を受けて、最初にやることが、その会社のビジネスを理解することです。僕は上司のナイジェリア人女性(とても頼りがいがあり、面倒見がいいので、「おかん」と呼んでいます)とマリの会社社長の元を訪問。会社の財務状況を理解するための資料を出してくれるよう、事前にお願いしていました。ところが、社長は何の資料も用意していなかったのです。

「売り上げとコストの月次データはありませんか?」「なぜないのですか? 会計システムがおかしいのではありませんか? そこは改善していただかないと、とても融資なんかできません」

僕は、畳みかけるように社長に迫りました。このくらいのデータは、すぐ集めて分析にかからないと、仕事が遅れる、という焦りもありました。

新卒で就職したゴールドマン・サックスでは、効率的に働かないと生き残れませんでした。仕事が遅いと、遅い分だけ、睡眠時間が減ってしまう。分析のための資料の収集が1時間遅れると、3時間の睡眠時間が、2時間になってしまうのです。

そんな体験があったので、僕にとって資料とは、時間を無駄にせず、さくさく集めるべきものでした。しかし、社長は、困ったような顔をして、僕の話を聞いているだけ。そして、結局、データは出て来なかったのです。

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