アフリカで学んだ、超・飛び込み営業術
優良案件を探す銀行員――はたから見れば産業スパイ?

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こういったさまざまな試行錯誤の中で、いちばん効果的だったのが、自分で車に乗って、工業地帯を回ることでした。工業地帯を産業スパイよろしく回って、大きそうな工場があったら、その名前と電話番号をメモします。大きい工場で、トラックが頻繁に出入りするなどにぎやかな場所であれば、大きな企業に違いない……。

実際、この勘はかなり当たります。いくつかの優良企業はこのやり方で発掘しました。でも、もちろん無茶は禁物。コートジボワールでは、ある工場の看板の写真を撮っていたら、お前は中国から来た産業スパイかと、本当に従業員に囲まれそうになったこともあります。

コートジボワールの工業地帯。産業スパイ容疑で取り囲まれそうになったことも……

このようにして、企業のコンタクト情報を貯めたら、事務所に戻って、知り合いに「この会社知ってる?」と聞いてみたり、グーグル検索などを使ってその会社の事業内容や規模感を調べます。それなりの規模がありそうな会社であれば、「今度会っていただけませんか?」というアポ入れのコールドコール(突撃電話)をかけます。

英語圏の国の場合は自分で電話をかけますが、フランス語圏の場合は、いきなり僕のハチャメチャなフランス語でやると怪しまれてしまうので、フランス語ネイティブの同僚たちにお願いをして電話してもらいます。

飛び込み営業の電話、というと大変そうですが、アフリカの会社は意外にちゃんと対応してくれます。特に「世界銀行グループなのですが……」、と言うと、それなら怪しいヤツらではないなと信用されるのか、社長や財務責任者などに取り次いでくれることがほとんどです。

こういうとき、独立系のファンドじゃなくて、世界銀行にいるのは楽をさせていただいているなあ、と思います。また、「日本人なんです」と言うと、アフリカの経営者たちは、日本はトヨタなどを生み出した大いなる産業国で、アフリカに対して政治的に中立である、と思っていますから、暖かく対応されることが多いのです。

ちなみに、最初はeメールを送ってアポを取ろうとしていたのですが、メールにはまったく返事をもらえませんでした。西アフリカでは、会ったことがないのにいきなりメールを送っても、返してもらえることはまずないので、まずは徹底的に電話をします。

お茶を飲み、与太話をしに行くのが営業の近道?

実際に訪問しても、「ちょうどいいときに来てくれました! 今年、工場を拡張する予定なので、すぐにおカネを貸してください!」といった資金需要があることは滅多にありません。最初の面会で築いた人間関係は、その後、何度も会いにいって温めていき、いざ資金需要が出た時点でお声がかかるようにします。

僕の営業道で心掛けているのは、「お茶を飲みにいく」ということ。東京で働いていた前職の証券会社時代、案件が取れなかったときに、クライアントの重役にサシで飲みに呼ばれて、こう言われたことがあります。

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