とりわけ「凶悪犯罪(殺人、強盗、強姦、暴行)」の発生率は、OECD諸国中、最低だった。日本の治安がいいことはどうやら間違いなさそうだが、犯罪全体ではスペインに負けていることを考えると、パンデミックを引き起こしてしまったスペインに対して、民度が低いというのは失礼に当たる。
一方、「世界平和度ランキング」という指標もある。イギリスの『エコノミスト』誌が各国の平和度を相対的に指数化したもので、「戦争による死者数」「隣国との関係」「テロの潜在性」「殺人事件の数」「軍人の数」「警官の数」など24項目によって算出される。ちなみに、世界平和度指数は「=治安が良い国」という意味ではないようだ(2019年版)。
1.アイスランド
2.ニュージーランド
3.ポルトガル
4.オーストリア
5.デンマーク
6.カナダ
7.シンガポール
8.チェコ
9.日本
10.アイルランド
(出所:『The Economist』)
犯罪率が低いからといって、イコール民度が高いともいえない。強権的な警察機構や司法のシステムが不備な場合、国民は検挙を恐れて犯罪に手を染めない。日本の検挙率は、法務省の『犯罪白書』によると、国内での刑法犯の認知件数は約369万件(2002年)をピークに減少し続けているものの、検挙率も刑法犯総数で53.1%(2012年)、一般刑法犯で31.7%(同9。約半数の犯罪は検挙されていない、ということだ。
一方で、日本の場合は他の国と異なる点が2点ある。ひとつは、一度逮捕されたら勾留期間が長期に及ぶこと。元日産CEOのカルロス・ゴーン被告の問題でもクローズアップされたが、「代用監獄制度」が機能していて、どんな軽微な犯罪であっても2週間程度は警察に勾留される。ほとんどの犯罪が数時間程度で釈放される欧米諸国に比べると、その強権度合いは大きい。
さらに、日本の刑法犯の場合、一度起訴されてしまうと99.8%が有罪という「有罪率」の高さも際立っている。「裁判」など意味を持たないのと一緒であり、日本の司法は延々と「儀式化された裁判」をしているにすぎない、という批判が国内外からある。仮に、この強権的なシステムが日本の民度の高さを維持しているとしたら、素直に喜んでいいものかとも思う。
そもそも日本の検察は、他の先進国と違って起訴する権利を持っているだけで、起訴は義務付けられていない。裁判に行く前に、検察が判断しており、検察の力が強すぎるという指摘がある。
安定した雇用環境が、高いレベルの道徳観を生む?
衣食足りて礼節を知る、という昔の偉い人が言った言葉があるが、民度が高いということは、社会的基盤がしっかりしていないとなかなか成立しない。貧困率でもある程度わかるが、不安定な雇用や職場での環境など、雇用環境の安定も不可欠だ。
<雇用環境>
まずは「失業率」だが、2019年のIMF(国際通貨基金)の調査によると、日本の失業率は105カ国中98位、2.36%と完全雇用の状況に近い。シンガポールやスイスには負けるが、その他のOECD諸国などには勝(まさ)っている。最悪の南アフリカなどは28.7%だ。
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