日本ではコロナよりも恐慌を招くほうが怖い 第2波では緊急事態宣言を避けて冷静な対策を

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指定感染症に指定すると、流行抑制に力を発揮する反面、医療現場の負荷も高める。これまでに判明した新型コロナの危険性を考えると、指定感染症を解除して、通常の感染症対応に戻しても大丈夫ではないだろうか。重症化リスクが低い若年層は、インフルエンザと同様に自宅待機でも深刻な問題になりにくい。そして、高齢者や基礎疾患を持っているハイリスク者に対して医療資源を集中させたほうが、第2波での対応力を高めることができると考えられる。

第3:国民への正しい情報提供

第3は、国民に対して正しい情報を提供することである。

とくに、新型コロナのリスクだけを強調して、国民の不安を煽らないことが重要である。現在の政府広報やこれに基づくメディアの報道は、依然として「恐怖の新型コロナ」との認識に基づいて、なんとしてでも感染を避けなければならないという論調である。一方で、死亡率が極めて低いことにはほとんど言及せず、国民の間でもその事実が共有されていない可能性が高い。

結果、国民感情には新型コロナに対する恐怖感ばかりが蓄積されてしまう。「コロナ鬱」「コロナブルー」などメンタル面の影響が現れたり、外出や人混みに恐怖感を抱いたりするようになったという人も多い。

こうした不安心理は、これから社会活動を再開する際に大きな足枷となる。3密回避やソーシャルディスタンスをあまりにも強調しすぎると、自ずと消費活動が萎縮することになり、経済の「V字回復」も実現困難になる。

前述のとおり、子どもや若年層は新型コロナに対するリスクが非常に低い。「感染しても自然経過するから、過度の心配は不要」というメッセージも必要ではないか。そのうえで、学校や幼児教育なども含め、低リスク層を優先して活動を全面再開することを検討すべきだ。新型コロナのリスクを正しく国民に伝え、必要以上に行動を萎縮させないことが求められる。

新型コロナ第2波では、よほど死亡者が急増しないかぎり、緊急事態宣言の発動は不要と筆者は考えている。日本ではとくに厳しい活動制限を講じることなく、新型コロナの第1波を乗り切ることができた。理由は不明ではあるが、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の分析によれば、4月7日の緊急事態宣言の6日前にすでに感染のピークを越えていたとされる。緊急事態宣言を発動しなくても、新型コロナ流行はコントロールできていたかもしれないのである。

こうした第1波の経験をさまざまな角度から分析すべきである。それを生かして、第2波が訪れる前に、日本ではどのような対応が必要かを改めて検討し、より賢い新型コロナ対策を準備することが求められる。他国と横並びの新型コロナ対策は必要ない。国民に過度の不安を抱かせることなく、長期化が予想される新型コロナとの共存を図るべきである。

枩村 秀樹 日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト

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まつむら ひでき / Hideki Matsumura

日本総合研究所 調査部長・チーフエコノミスト。1992年東京大学経済学部卒業、住友銀行入行。1995年日本経済研究センターに出向。韓国・タイ経済、日本経済、少子高齢化・産業構造変化などを担当。2014年内閣府 経済財政諮問会議 民間議員室に出向。2016年日本総合研究所マクロ経済研究センター所長、2019年7月から現職。

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