「通期損益が浸食されるに至りました」
5月8日に2020年3月期決算を発表した不動産賃貸仲介のハウスコムは、投資家向けの資料の中で悔しさをにじませた。昨年までは賃貸仲介業務が好調に推移していたが、今年に入り新型コロナウイルスの影響が直撃。繁忙期である年度末にかけて就職や転勤に伴う引っ越し需要が抑制され、営業増益の期初計画は未達となった。
入居率は高止まりでも…
コロナ禍をめぐる賃貸住宅業界では明暗が分かれている。好調なのは稼働率と家賃水準だ。賃貸マンションや高齢者住宅を多数保有するREIT(不動産投資信託)の大和証券リビング投資法人は、5月20日に2020年3月期決算を発表。保有する賃貸住宅の稼働率は今年3月~4月時点で98.6%。家賃も入居者の入れ替え時に2%の増額改定を行った。
賃貸住宅は本来、オフィスや商業施設といったほかの不動産と比べて不況に強い。東京カンテイによれば、マンションの家賃はこの10年間安定的に推移し、リーマンショックに見舞われた2008年前後でも、家賃水準が大きく下がることはなかった。投資家からも「安定資産」として、賃貸マンションへの投資意欲が高まっている。
一方で苦境にあえぐのが賃貸仲介業者だ。コロナ禍で外出が自粛された結果、入居者が退去せずそのまま住み続けることを選択するケースが増えているためだ。大手家賃保証会社のCasaによれば、賃貸住宅への入居申込み状況は前年同月比で今年3月は80%、4月には55%まで落ち込んだ。
不動産情報検索サイト「ホームズ」を運営するライフルが5月に行った調査によれば、仲介業者の7割以上が新型コロナウイルスの影響で来店客や内見が減少していると答えた。入退去の減少のほか、仲介会社自身の営業時間短縮や対面営業の自粛、人員削減なども響いた。
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