「2年ほど前から拡大路線を修正してきたが、足元の700万台の門構え(生産能力)に対して販売は500万台。この状態で利益を出していくことは困難と言わざるをえない」
5月28日、オンラインでの2019年度決算会見に臨んだ日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は苦渋の表情でそう語った。
部品メーカーからの「上納」はもう限界
同日発表した2020年3月期(2019年度)の最終損益は、6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)に転落した。固定資産の減損などの構造改革関連費用計6000億円を計上したほか、新型コロナウイルスの感染拡大による販売減少が響いた。赤字額はくしくも、1990年代後半に経営危機に陥った際にカルロス・ゴーン最高執行責任者(COO、当時)の下で経営再建を進めていた2000年3月期(6843億円)とほぼ同水準だ。
ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」では、国内の完成車工場3拠点を閉鎖するなどの大ナタを振るった。傘下部品メーカーの保有株を売却して「系列解体」を断行。部品の購買コストを3年間で20%削減するため、取引停止も辞さない構えで各部品メーカーに厳しい値引きを強いた。それを原資に、日産はV字回復を実現した。
しかし、今回の危機は当時とは事情が異なる。日産からの値引き要請はほかの自動車メーカーと比べて苛烈であることは業界内では有名だ。それに加えて近年の日産の業績不振によって、取引が多い部品メーカーは疲弊しきっている。
ある部品メーカー幹部は「生産台数が右肩上がりの時代だったら値引きに応じることで、日産も部品メーカーも成長してお互いにメリットがあった。でも、今ではこちらから日産に利益を還元できるだけの力がもう残っていない」と話す。
そのため、かつてのように部品会社への苛烈なコスト削減要求は難しく、日産が再建に向けて取り得る選択肢は限られる。最大の手段は自らの身を切ること。具体的には生産能力と人員削減による固定費カットだ。
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