決算発表の前日にあたる5月27日に発表されたアライアンス中期計画の肝は、3社間でのかなり踏み込んだ役割分担にある。地域や技術、車種ごとに強みがある1社を「リーダー」、サポート役に回る2社を「フォロワー」と位置づけ、研究開発での重複をなくしたり、生産を集約したりしてコストを削減する枠組みだ。
例えば、中型車と電気自動車(EV)の開発は日産がリーダーとなって担い、開発した新車をほかの2社に「姉妹車」として提供する。一方で、小型車開発はルノー、プラグインハイブリッド(PHV)車開発は三菱自に任せ、日産は得意とする分野に人材と資金を集中させる。
CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術の開発でも同様だ。自動運転技術は日産、コネクテッドの主要部分はルノーが担うことになる。
ライバルと同水準の研究開発費を確保
日産の研究開発費は潤沢とはいえない。2020年3月期の開発費は5400億円程度で、トヨタ自動車の1.1兆円、ドイツのフォルクスワーゲンの1.8兆円に比べて大きく見劣りする。
一方、ルノーの研究開発費は4400億円、三菱自は1300億円で、3社合わせれば1.1兆円を超える。単純合算すると、数字上はライバルと同じ水準になる。
加えて、3社は開発のすみ分けや、車体を構成するプラットフォーム(車台)やアッパーボディ(上屋)の共通化の加速などによって、1車種あたりの開発費と設備投資額を最大で40%削減できると試算する。
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」と評価する。
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