国際貿易裁判所判決は3人の判事が一致、うち2人は共和党系。法の解釈が争点の場合、党派性が薄まる傾向で大統領に不利

トランプ政権発足から4カ月。この間にトランプ政権が打ち出した政策はアメリカ社会を根底から変えるものであった。多くの人々や国々が、その政策に翻弄されてきた。だが、当初の勢いのまま、トランプ大統領が政策を推し進めることはできないだろう。壁となるのが司法だ。法治国家であるアメリカでは司法の果たす役割は大きい。
政権発足後、政策に対して起こされている訴訟の数は少なくとも328に達している。143の大統領令の3分の1で訴訟が進行中で、既に9件で違法判決が出ている。外からはトランプ大統領が圧倒的な権力を行使しているように見えるが、必ずしもそうではない。アメリカの司法は依然として独立性を維持している。
トランプ関税は憲法が規定する3原則に違反
5月28日、米国際貿易裁判所はトランプ政権に大きなダメージを与える判決を下した。トランプ関税(相互関税とカナダ、メキシコ、中国への追加関税)を違法と判断し、差し止めを命じたのである。高率の関税により倒産も含む財務的なダメージを受けると予想される民間企業6社とトランプ関税で財政的な損害を被る可能性があるとするオレゴン州を代表とする12州が訴えを起こしていた。2件の訴訟は統合され、28日にその判決が出た。
裁判所がトランプ関税を違法とする根拠はまず憲法である。憲法第8条には「租税、関税、輸入税、消費税を賦課し、徴税する権利は議会にある」と定められている。憲法の規定では、議会は政府へ無条件に権限を移譲できないという原則(nondelegation doctrine)と、経済や社会に重大な影響を及ぼす政策に関して議会が政府に権限を与える場合、明確かつ具体的に権限を与えなければならないという原則(major questions doctrine)、さらに三権分立の原則があり、トランプ関税はそのいずれにも反するというものである。判決文は「関税権の無制限な行政府への移譲は立法権の不適切な放棄である」と指摘している。要するにトランプ大統領が好き勝手に関税を課すことはできないということだ。
次に裁判所は、トランプ大統領が「1977年国際緊急経済権限法(IEEPA)」を法的根拠とすることを疑問視する。トランプ大統領は「外国のアメリカに対する非相互的な扱いでアメリカは歴史的かつ永続的な貿易赤字に陥っている」ことをIEEPAがいう「緊急事態」と規定し、高率関税を課す必然性を主張している。これに対して判決は、「明確な確認できる限度」を設定することなく関税を課していて、憲法第8条の規定に反しているとする。貿易赤字を理由に輸入品に高率関税を課す法的な合理性はないというわけで、「世界的な報復関税は議会が大統領に課している制限を超えている」と指摘している。トランプ大統領は、課税権は無制限であると主張しているが、適用期間と範囲の制限を考慮すると、その主張は国際緊急経済権限法によって与えられている権限を逸脱するというのが裁判所の判断だ。
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