
首相官邸で並ぶ岸田首相と植田総裁(左)(2023年4月撮影)(写真:毎日新聞社/アフロ)
2024年5月7日夕。日本銀行総裁の植田和男は官邸に呼ばれ、首相の岸田文雄と会談した。終了後、植田は「最近の円安については、日銀の金融政策運営上、十分注視していくことを確認した」と記者団に説明した。さらに「(円安で)基調的な物価上昇率にどういう影響が出てくるかについて注意深く見ていく」とも補足した。前々週の記者会見で出た、円安容認とも取れる“失言”を事実上撤回したのである。
4月26日に政策の現状維持を決めた後、植田は「(円安は)基調的な物価上昇率に大きな影響を与えてはいない」と説明し、記者から「物価への影響は無視できる範囲だったのか」と問われると、不用意にも「はい」と答えてしまった。これが円安容認と受け取られ、円安・ドル高が一気に進んだ。
これに驚いた首相側近は、すぐさま岸田と対応を協議し、大型連休明けに植田を呼び出すことにした、と政府関係者は明かす。「総裁の口から、自分も円安を気にしているとはっきり言ってもらう。そのための場が必要だ」というのが官邸に呼ぶ理由だった。
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