日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中

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振り返れば、日産側にはルノーとの協業を巡って苦い記憶がある。

それはゴーン体制で2014年から始まった、開発や生産、人事、購買などの主要な機能を両社で一体化する取り組みだ。日産社内では「機能統合」と呼ばれた施策で、意思決定を統一してアライアンスの効率性を高めることが表向きの狙いだったが、責任の所在が曖昧だった結果、新型車の投入や技術の採用などを巡って両社間で主導権争いが頻発。日産の開発現場にもルノーからの横やりが入るようになった。

今回の決算会見は新型コロナウイルス感染拡大に伴い、オンラインでの実施となった(写真:日産自動車)

さらに、当時はルノーの筆頭株主であるフランス政府が両社の経営統合を要求し始め、それが両社間の火種として燻り始めていた時期だった。「機能統合は将来的な経営統合への布石だった」(当時の日産幹部)ため、経営の独立を守りたい日産の日本人幹部を中心にルノーとゴーン氏に対する不信感が募っていった。

2018年11月にゴーン氏が逮捕されて以降、ルノーが日産に経営統合を公然と要求し、それを拒否する日産との間で応酬が続いた。一時は提携解消が取りざたされる程にまで関係が悪化した。

呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか

そうした経緯がある両社が「経営統合の議論は当面棚上げ」(日産幹部)して、再び手を取り合った。その日産幹部は「両社とも切羽詰まっていて、統合の議論にエネルギーを割くわけにはいかない。立て直しにはアライアンスを活用するのが早道で、少なくとも現時点では思惑が一致している」と言う。

ルノーのジャンドミニク・スナール会長も5月27日のアライアンス記者会見で、「経営統合の計画はない。統合しなくても効率化を追求できる」と言い切った。

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それほど各社の経営状況は危機的だ。コロナ危機以前から3社の業績は悪化しており、ルノーは2019年12月期に10年ぶりの最終赤字に転落。三菱自動車も2020年3月期に258億円の最終赤字を計上した。一時は世界トップだった3社合計の販売台数も下降線をたどる。2019年は前年比60万台減の1015万台となり、世界3位に転落した。

アライアンスの中で争いがあっても、絶対的な君主として有無を言わせずに差配してきたゴーン氏はもういない。3社の経営の一体化がさらに進むことになる今回の協業策を機に、ルノー側がいずれ経営統合の話を持ち出し、対立が再燃する可能性もある。日産も含めて瀬戸際に立たされている3社が、「呉越同舟」の中でどうエゴを抑えてアライアンスを機能させるのかが問われている。

岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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