日本には小規模事業者が305万社もあります。これら小規模事業者の平均従業員数はたったの3.4人です。また中堅企業のカテゴリーの企業でも、日本の場合、平均従業員数はたったの41人です。これはEU28カ国平均の104人を大きく下回っています。
中小企業の定義を「500人未満」に引き上げるべき
このように小さい企業ばかりになってしまった理由の1つは、国の政策にあります。日本では中小企業が非常に小さく定義されているうえ、手厚く優遇されてきたため、中小企業に人的資源が集中してしまい、中小企業が増えたのです(参考:コロナ禍「企業援助と財政再建」を両立する方法)。
「日本企業の規模が小さいことには経済合理性がある」「中小企業の生産性が低いのは大企業による搾取が原因だ」「生産性が低いのは日本人のサービスのレベルが高いからだ」など、さまざまな反論があります。
しかし、それらはただの根拠のない妄想です(それぞれ「『日本は生産性が低い』最大の原因は中小企業だ」「生産性低迷は『下請けイジメのせい』という誤解」「サービス業は『日本の低生産性』の主犯ではない」参照)。
日本では中小企業の定義は業種によって異なりますが、それぞれの業種で働いている人数を基準に加重平均をとると、「169人未満」になります。一方、EU28は250人未満、ドイツとアメリカは500人未満です。
中小企業を小さく定義すればするほど、企業の平均規模が小さくなって、国の生産性が低下します。「中小企業の定義」は、実は企業の成長を妨げる要因として機能するのです(参考:コロナ禍「企業援助と財政再建」を両立する方法)。
小さい企業ばかりになってしまっている、この状況を変えるにはどうしたらいいのか? 答えは明白です。
先ほども紹介したように、日本の中小企業の定義は他国と比較して小さすぎます。まずこれを、少なくとも「500人未満」まで引き上げるべきです。現状では業種別に基準が異なっていますが、これもやめて一律500人未満にすべきです。そうすることによって、成長を妨げる壁を取っ払うのです。
日本では、従業員数のほかに資本金も中小企業の基準として使われています。資本金が一定額以下ならば中小企業と認められ、さまざまな税優遇と補助金の対象となります。
これも廃止するべきです。この基準は、企業の成長と健全な経営に悪い影響を与えています。税優遇をするのであれば、「500人未満」という人数の基準だけで十分です。
世界中を見渡してみても、資本金を中小企業の定義に使っている国はまれです。なぜならば、資本金の多寡はビジネスのパフォーマンスには直接的な影響を与えないからです。さらに、企業に資本金を増やさないインセンティブを与えると、今回のコロナショックのような有事への対応力を下げてしまうおそれもあります。
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