コロナ禍「企業援助と財政再建」を両立する方法

有事だからこそ「産業構造改革」を断行せよ

コロナ危機に対応するための企業援助を考える際には、財政の問題を避けて通ることはできません(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
小規模事業者が多い産業構造が財政に与える悪影響を解説した前回(日本経済が「コロナ危機」にこれほど弱い根因)に続き、今回は生産性アップ、賃金アップに消極的な企業を動かすことで、危機からの脱却と財政再建を両立させる方法を解説する。

収束後の「賃金アップ」を企業支援の条件にするべきだ

安倍政権のもとで行われてきた賃上げ政策に、大半の日本企業は賛同してきませんでした。特に、最低賃金でたくさんの労働者を使っている小規模事業者は、最大の抵抗勢力として徹底して反対の声を上げ続けています。要するに、今までの平時の7年間、多くの企業は国が求めたことに応じてこなかったのです。

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一方で、今回のコロナ禍のような非常事態が起きると、多くの企業が政府に対して補助金や助成金の拠出を激しく求めてきます。

「有事なんだから、条件なんか付けず、とにかく満遍なく企業にお金を渡して救ってあげるべきだ」と主張する人がいます。しかし、この意見は根本的に間違っていると思います。

今のような有事のときこそ、企業はお金を渇望しているので、政府から出される条件を飲まざるをえません。今こそ、事態が鎮静化した後の生産性向上、そして何よりも労働者の賃金アップを約束させるよう、強いメッセージを発信するべきです。

また、企業に対して「支援金」という実質的な資本注入をするのであれば、かつての大手銀行の公的資本注入と同様に、生産性をどう高めるか、労働者の賃金をどう上げるかという計画を企業に提出させて、金融機関にそれをチェックしてもらう形が大切です。もちろん、健全化計画の提出は事後でかまわないでしょう。

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