生産性低迷は「下請けイジメのせい」という誤解

「一部の事例」を一般化するのは間違いのもと

日本の中小企業の生産性が低いのは、本当に「大企業による搾取」が原因なのでしょうか(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で、日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析している。
日本企業の「生産性が低い」問題の根源は「規模が小さい企業が多すぎる」産業構造にあることを明らかにした前回(「日本は生産性が低い」最大の原因は中小企業だ)に続き、「大企業による搾取」が中小企業の生産性に与える影響を解説してもらう。

主張する前に「データの確認」をするべき

私は30年以上にわたって、日本経済の分析を続けてきました。その間に得られた知見の1つに、「日本では俗説的な感情論を振りかざされることが多い」というものがあります。

『日本企業の勝算』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

例えば、日本の中小企業の生産性が低いのは厳然たる事実ですが、この事実を正当化したいのか、以下のような論理を振りかざす人もいます。

「中小企業の生産性が低いのは、取引先の大企業の度重なる値下げ要求のせいだ」

この論理は、次のように展開されます。

「大企業の生産性が高いのは中小企業を叩いて、本来中小企業に計上されるべき付加価値を吸い上げているだけだ」

確かに、大企業による下請けイジメ、すなわち搾取は存在します。私が経営する小西美術工藝社もそういう目に遭うことがあります。しかし、357万社ある中小企業のうち、すべてが下請けなのか、その被害を357万社すべてが被っているのか、冷静になって考えてみる必要があります。

まず、仮に「大企業による搾取」が中小企業の生産性の低さの原因だというのであれば、中小企業の何パーセントが大企業の下請けや孫請けをやっているのか、それが中小企業の生産性に対してどこまで悪影響を与えているのかを確認するべきです。

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