生産性低迷は「下請けイジメのせい」という誤解 「一部の事例」を一般化するのは間違いのもと

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このような検証もせず、自身の会社に起きていることや、聞いたことがある話を日本経済全般に一般化して考えを進めてしまうと、「中小企業の生産性の低さの原因は、大企業による搾取だ」と結論づけて、中小企業の生産性の低さを正当化できた気になってしまうのです。

賢明なる読者の皆さんには説明の必要はないかもしれませんが、いまの話には著しい論理の飛躍があります。

この件に関して、近著『日本企業の勝算』の中で4つの検証結果を紹介しています。ここでは、その分析の概要をご紹介しましょう。

「搾取説」には数字の裏付けがない

分析1:搾取が多いと言われている業種の生産性はむしろ高い

まずは、搾取で苦しんでいる中小企業が多いと言われている産業の生産性を検証してみました。

搾取がひどいと言われる産業の代表として、よく挙げられるのが建設業と製造業ですので、これら2業種の生産性を確認してみました。すると、製造業の生産性は722万円で、建設業は568万円でした。いずれも全業種平均の546万円より上で、全体平均を上回っていることがわかります。

これら2業種では、大企業と小規模事業者の格差が非常に著しいので、大企業による搾取が一部で行われている可能性は確かに否定できません。しかし、両業種の中堅企業の生産性も小規模事業者の生産性も、全業種平均より高いのです。そうである以上、業界全体で搾取が行われ、それが日本の生産性低迷の原因であるという結論に結びつけるのは無理があります。

日本の中小企業の生産性を最も低下させているのは、宿泊・飲食、生活関連や小売業です。これらの業種は、基本的に建設業や製造業ほど大企業と下請けという明確な力関係があるわけではありません。小売業の中には、各地方の商店街の店なども数多く入っていることを忘れてはいけません。したがって、搾取によって生産性が低下しているというのは、極めて疑わしい説だと言わざるをえません。

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