コロナ禍「企業援助と財政再建」を両立する方法 有事だからこそ「産業構造改革」を断行せよ

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では、なぜ国によって企業の平均規模に違いが生じたのでしょうか。なぜ日本では、小規模事業者が多いのでしょうか。さまざまな理由が複合的にかかわっているのですが、今回は最も重要な理由を紹介します。

日本に中小企業が多いのは「中小企業政策」のせい

実は、国によって企業の平均規模が違う最大の原因の1つは、政府による規制です。簡単に言えば、中小企業政策の違いです。

日本に限らず多くの国では、何らかの形で一部の企業を優遇する政策をとっています。どの企業を優遇するかを決める基準としては、「企業規模」が採用されることが多いです。

企業規模によって優遇する企業を決めると、その国の労働力は、優遇されている規模の企業群に集まります。これはさまざまな研究で明らかにされています。

スペインやイタリアのように中小企業が優遇されている国では、中小企業が増えます。その代わり、中堅企業と大企業が悪影響を受けて小さくなります。逆にアメリカやスウェーデンのように大企業を優先すると、中堅企業と小規模事業者の数が減り、労働力が大企業に集中します。

当たり前ですが、中小企業政策を強化すればするほど、その補助金を狙って、中小企業が増えます。中小企業の生産性は構造的に低いので、生産性の低い産業構造となります。

さらに、規模を基準にした中小企業優遇策は企業の成長の弊害要因となり、企業の平均規模が小さくなることが海外の研究によって明らかにされています。その現象は「bunching」と呼ばれています。

「Firm Size Distortions and the Productivity Distribution: Evidence from France」という大変有名な論文があります。この論文では、フランスで起きた「bunching」現象が検証されています。

フランスでは、従業員数が50人以上になると労働基準法がフルに適用されますが、50人未満の場合は適用が猶予されます。別の言い方をすると、従業員数が50人以上になると規制が厳しくなるので、中堅企業と大企業には実質的に一種の税が課されていることになります。

多くの企業がこの規制を受けるのを嫌った結果、フランスでは従業員数50人未満の規模に、企業が集中してしまいました。その様子は、企業の規模別の分布を見ると非常に鮮明に見て取れます。

次ページ日本は中小企業の「定義自体」が小さすぎる
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