日本人は「コロナ倒産の増加」を恐れすぎている 「企業数の減少=失業の増加」という思い込み

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大切なのは「企業の数」ではなく「雇用の数と質」だといいます(撮影:今井康一)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、新刊『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
コロナ後に激変する日本人の意識について解説した前回に続き、今回は「企業数と雇用数」にまつわる「日本人の大誤解」を解説する。

企業数が減ることと雇用が減ることは別問題

一般的には、企業の倒産が増えると失業者が増えるなど、雇用面に悪い影響が出ると考えられがちです。短期的には、それはありえます。

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しかし、実は日本の場合、企業の倒産・清算・廃業による企業数の減少と雇用には、ほとんど関係がないことが明らかになっています。倒産件数のデータには、一般的に言われるほどの意味はなく、もっとその中身に注目しないといけないのです。

実際、1999年から2016年の間に、企業数は126万社も減っているにもかかわらず、就業者数は3万人も増加しています。その後も、就業者数は継続的に増えています。2018年の就業者数は6664万人で、過去最多を記録しました。

日本の大企業と中堅企業を合わせた数はおよそ53万社ですので、仮にこれらがすべて倒産したとしても、126万社には到底およびません。つまり、減った分のほとんどは小規模事業者であったことがわかります。

小規模事業者の平均雇用者数は3.4人なので、1社倒産してもその影響は極めて軽微です。大企業が1社倒産すると平均1307.6人が失業することになりますし、中堅企業でも平均41.1人の雇用者がいるので、影響の大きさは小規模事業者の比ではありません。

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