日本人は「コロナ倒産の増加」を恐れすぎている 「企業数の減少=失業の増加」という思い込み

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2011年から2018年までの間に、日本では生産年齢人口は618万人も減っているのに、就業者数は371万人も増加しています。

残念ながら、データがあまりに充実していない日本では、企業数の最新データは2016年のものなのですが、2011年から2016年までに27.5万社減っていることから、2011年から2020年までの間、企業数は減っていると推測されます。

小規模事業者を集約し、中堅企業を育てよ

以前発表した「『日本は生産性が低い』最大の原因は中小企業だ」という記事でも説明しましたように、先進国の生産性の高低は主に産業構造によって決まります。極端に言うと、3000人の労働者を1000人ずつ3社に配分するか、3人ずつ1000社に配分するかによって、生産性は決まるのです。

日本は人口減少に対応するために、生産性を高める必要があります。もちろん企業数を3社にする必要はありませんが、小さい企業をある程度まとめて、次第に企業の規模を拡大させるべきです。

何度も言いますが、企業数が減るからといって雇用が減るとはかぎりません。先の例で考えれば、1000社に配分されている3000人を、10人ずつ300社に配分すれば、企業数は減りますが、雇用は減りません。

つまり、小規模事業者の数を減らして労働者を中堅企業に集約することで、雇用を犠牲にすることなく生産性を高めることが可能なのです。

小規模事業者を少しずつ減らしながら、労働者を中堅企業と大企業に移管する戦略を巧みに実践すれば、企業数が減ったとしても、失業者を増やさないことは可能です。しかも、この戦略によって、生産性も向上し、それに伴い給料も上がるのです。

簡単にいえば、中堅企業政策を経済政策の中心にすることこそ、この国の復活のカギなのです。

実際のデータを分析すると、企業数と雇用は連動していないことがハッキリします。こんなところでも、エビデンスの重要性を痛感します。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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