仰天!アフリカは、日本よりも物価が高い 貧しい国ほど、ビジネスにおカネがかかるのはなぜ?

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このとき、そうか、マリの会社もこれと同じ状況なんだなあ、と腑に落ちたのです。そして実際、調べてみると、電気代がこの会社のコストの大きな部分を占めていました。製造業にとって、これだけ電気代が高いというのは致命的です。

マリの工場でもうひとつ驚いたのが、原材料のほとんどを輸入に頼っていることでした。たとえば、常夏でこんなに果物がたくさん取れる国なのに、ジュースの濃縮果汁を作る会社が地元にないので、その濃縮果汁をはるばる中東やアメリカから輸入しているのです。また、ペットボトルを作るためのプラスチックも、タイや韓国から輸入しています。

そして、衝撃的だったのが、工場の倉庫に山のように積み上がっている原材料の在庫。ビジネススクールで、「在庫は敵! トヨタのように在庫を最小化するのが、効率的な経営です」と習ってきた僕にとっては、あってはならない光景でした。工場長の襟首をつかまんばかりの勢いで、「ちょっと、この在庫、何カ月分くらいあるんですか?」と聞くと、ゆるい感じで、「うーん、半年分近くあるかな」とのお答え。

「日本の企業は数時間分の在庫しか抱えてない会社だってあるんですよ! いったい何をやってるんですか」と言いかけると、工場長は、ぼそっと、「ヨースケさん、マリからいちばん近い港のダカール港と、ここまでの距離って、1300キロメートルあるんですよ」と言いました。「それが何なんですか?」と聞くと、工場長は以下のような話をしてくれました。

大変すぎる、西アフリカの内陸輸送

「いや、ダカール港って西アフリカの玄関口の割には、設備が整っていなくて、また、通関手続きの効率も悪く、船が港に着いた後の荷物の積み下ろしに何週間もかかったりするんですよ。それに、時々、港湾労働者のストライキがあったりして、この間なんて、注文したはずの濃縮果汁がダカールからマリに届くまでに2カ月もかかったんですよ」

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アフリカと一口に言っても、非常に広い。セネガルの首都ダカールから、マリの首都バマコまで、なんと1300キロもある

実際、自分が日本からセネガルに送った荷物も、ダカール港に届いたという知らせが運送業者から届いてから、1カ月くらい経っても荷物が家に届かず、イライラしたことがあります。揚げ句の果てに、港の倉庫に入っている間に荷物の一部が盗まれていたりして、ショックを受けたものです。

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