家だって、地元の人たちが住んでいるような場所に住めば安くなるのかもしれませんが、停電がひっきりなしに続くこの国では、軽油の発電機が付いていることは必須だし、水やお湯もちゃんと出る家に住みたい……また、ちゃんとガードさんがいるなど、治安面も気になります。
ちなみに建築用の資材や家具は輸入に頼っているので、アパートの建築費用は先進国のそれよりも高く、大家はその費用を回収する必要があり、それらをかんがみると、家賃は東京の都心に住むのと同じくらい高くなるのです。
なんだか生活の文句ばかり書いていると思われそうですが、コストが高いということは、ビジネスをするうえでも重要な問題です。
過去の記事で、マリの飲料会社のプロジェクトの話をしましたが、この会社の財務データを見ると、やたらとコストが高くて思ったより儲かっておらず、不思議に思いました。「途上国だから労働賃金もタダ同然だろうし、原材料費もきっと安いに違いない。それなのに、そんなに儲かっていないのは、きっと経営が悪いからに違いない」と思っていたのです。ところが、この認識は大間違いでした。
コスト高は、ビジネスにも跳ね返る
マリの飲料工場に行ってみると、工場の裏から「ぶーーん、ぶーーん」という変な音が聞こえてきます。「何か機械の調子が悪いのですか?」と工場長に尋ねると、「いやいや、今日は丸1日停電しているので、機械を稼働するための発電機が回っているのですよ。」とのこと。
日本にいた頃は、停電というと、大きな台風のときくらいだった記憶しかないので、からっと晴れ渡ったマリの青空の下、停電しているというのは、なんとも腑に落ちない気分でした。
それからしばらくして、セネガルのわが家に大家さんから電気代の請求書が届きました。1カ月で1万円以上の電気代の請求書。日本にいた頃の電気代の3倍くらいの値段です。これには、怒りとショックで手が震えました。決して無駄遣いしているわけではなく、電気はこまめに消すし、使っていない電化製品はコンセントから抜くし、節約度合いは日本にいるとき以上だったのです。
大家さんに話を聞いてみると、「今月は停電続きで軽油発電機を回しまくったの。セネガルは産油国じゃないし軽油代も高いから、この値段なのよ。それに、そもそも停電しなくても、国営の電力会社は独占で効率が悪いから、電気代はもともと高いしねえ」とのことでした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら