仰天!アフリカは、日本よりも物価が高い 貧しい国ほど、ビジネスにおカネがかかるのはなぜ?

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工場長は話を続けます。「港から、1300キロメートルの内陸輸送で物資をマリに持っていくのはさらに大変で、予想外のことが起こります。あなたもセネガルの道を車で走って、道路がぼろぼろで車が故障したり、警察官の嫌がらせを受けたことがあるでしょう」。

確かに、以前、お客さんの輸送トラックに乗せてもらったとき、国道沿いのチェックポイントで警察官に止められて、「お前たちのトラックには消火器が積んでないじゃないか」などと、些細な因縁をつけられて、「通してほしければ500円払え、払わないとここで足止めさせるぞ」などの要求を受けたことがあります。

そのときは、警官のご機嫌を取るような会話をして仲良くなって、「そんなに払ってほしければ、領収書をくださいな」とたんかを切って払わずに済んだのですが(賄賂なので、警官側も領収書は出せません)、運転手いわく、長距離輸送のときは、しょっちゅう警官に止められるから時間は無駄になるし、何回かに1回、特に急いでいるときなどは、おカネを払わざるをえない、とのこと。

ちなみに、申し添えておきますが、警官も嫌がらせそのものが目的でやっているわけではなく、お給料が政府からろくに払われない中、生きていくための糧を稼ぐために賄賂を要求しているのです。

セネガルの街道。積載量オーバーは朝飯前!

警官と並んで恐ろしいのが、片道1車線で大型トラックがたくさん走っている道での追い抜き。対向車線を確認して追い抜きにかかり、アクセルを踏み込んだところ、道の先に大きな穴が開いていたりしてヒヤッとしたことが何度あったことか……。自家用車でも大変なのですから、スピードが遅く車体の長いトラック運転手の疲労は半端なく、移動に時間はかかるし、事故も多くなります。

日本に住んでいた頃は、インターネットでワンクリックしたら、翌日には注文した商品が届いて、あたかも製造業者と自分の家が、ドラえもんの「どこでもドア」でつながっているくらいの感覚でいたのです。でも、それは整備された道路や鉄道が、全国津々浦々つながっていたから。ネット注文の裏で物資を運んでいる運送業の方々の努力が、僕には見えていなかっただけなのでした。

一方、日本のような輸送インフラが整っていない西アフリカでは、運送をうまくやる、というのはビジネスの要(かなめ)です。物資を海外からの輸入に頼っているので、何カ月分かまとめて注文したほうが船賃は安くつくし、道路が整っていない状況では、もしもの運送遅延に備えるべく、在庫を抱えれば抱えるほど安心です。こうなってくると、予備の在庫を抱えるための運転資金を手当てすべく借金をしたり、倉庫代を払ったり、余計なコストがかかってくるわけです。

次ページスタッフの給与明細を見て、また仰天
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