「コロナ後の世界」へ導く1冊
新自由主義的な流れの中で、地球の隅々へとグローバリゼーションが及び、あらゆるものが商品に変わり、地球全体が1つの資本主義社会となった現代。
このグローバル社会を自由に往来して、たちまちのうちに世界中を危機に陥れたのが新型コロナウイルスだ。
経済は大打撃を受け、多くの国が自国優先の体制に切り替わり、危機管理においては、やはり国境や国家が意味を持つという現実が立ち現れている。
「コロナ後の世界」について、私たちはどう考えればよいのだろう。そもそもこの社会にとって、「自由」とはどのようなものだったのか。「安定」とは? 「経済」とは? 「お金」とは?
当たり前に使ってきた概念に疑問符をつけてみるが、それを本質から語る言葉を持つ人は多くない。『岩井克人「欲望の貨幣論」を語る』は、これらの素朴な問いを持つ読者を、豊かで深い教養と、鋭い理論的な洞察によって、思想の旅へと導いてくれる1冊だ。
岩井克人氏は、『貨幣論』『会社はだれのものか』など、正統的な近代経済学の枠組みにとどまらず、さまざまな角度から問いかけ、考察してきた日本を代表する経済学者だ。その視野は、経済学だけでなく、歴史、哲学、古典文学、神話にも及び、幅広い。
本書の序盤では、まず、現代のグローバル資本主義社会を眺めたうえで、「個人の自由」と「社会の安定」について触れられる。
自由が増えれば安定性は減り、安定性を増やせば自由は減る。岩井氏は、近代社会に生まれてしまった以上、「自由と安定との二律背反」の中で生きて行かざるをえないという現実を認識することが重要になっていると言う。
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