「本当に欲しいもの」を知る人が持つすごみ

スティグリッツとファーガソンを支える精神

ファーガソン(左)とスティグリッツ(右)が、コロナの前と後で変わらない「問題の本質」を論じる(写真:NHK)
コロナ危機など、不確実性が増す世界で、日本と世界はどこへ向かっているのか?
格差、分断で不透明感が増す世界を知性たちが分析した異色のNHK経済教養ドキュメント「欲望の資本主義2020 日本・不確実性への挑戦」とBS1スペシャル シリーズ コロナ危機「グローバル経済 複雑性への挑戦」「グローバル経済 回復力の攻防戦」が『欲望の資本主義4 スティグリッツ×ファーガソン 不確実性への挑戦』として書籍化された。
『欲望の資本主義4 スティグリッツ×ファーガソン 不確実性への挑戦』では、未来を展望する歴史学者ファーガソン、闘う「経済学の知の巨人」スティグリッツの2人が、コロナの前と後で変わらない「問題の本質」を論じている。2人の知の巨人に共通するものは一体何なのか? 番組を企画したNHKエンタープライズ番組開発エグゼクティブ・プロデューサーの丸山俊一氏に聞いた。
また、コロナ後のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の嵐、アメリカ型「バーチャル経済」の光と影を追った、BS1スペシャル シリーズ コロナ危機「グローバル経済3 アメリカ バーチャル経済の光と影」の見どころもお届けする。

欲しいのは「お菓子」ではない

「お菓子が欲しい」と幼い我が子が泣き叫ぶ時、その言葉に簡単に応じてしまうことなく、そっと抱きしめ、頭を撫でてあげるのが賢い親というものだ。

『欲望の資本主義4 スティグリッツ×ファーガソン 不確実性への挑戦』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

精神分析家として、また稀代の思想家、哲学者として名を残すジャック・ラカンの書に出てくるエピソードと記憶する。ことほど左様に、人間の欲望は屈折する。実は愛情を求めているのに、お菓子という対象を代替物とすることで、その欲望を形にしてしまう……、素直には、本当に求めるものを口にできない人間という存在の不思議な性。

子どもにはまだ自己認識がうまくできないから、と思われた方もいるかもしれない。だがはたしてそうだろうか? むしろ幼い子どもなら、まだ泣き叫べるだけマシかもしれず、大人になるほどに実は欲望の表出は難しく、そして屈折は大きく、自らが本当に欲するものに辿り着くのが困難になっていくのだとしたら、実に皮肉な話だ。

実際、形にならない思いを無意識へとしまい込み、ともすれば「より早くより高くより遠くへ」と直線的な競争から降りられない力に苦しむ人々が増えていると言わざるをえない、複雑化した現代社会。そして、本当に欲しかったものは何だったのか? いよいよわからなくなってしまった人々も少なくないのではないだろうか?

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