「夫婦の絆」も破壊するコロナ禍の恐ろしい作用 閉じこもり生活でもソロ時間の確保が重要だ

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夫側の理由で増えているのは、「妻からの精神的虐待」で+8%、「妻からの身体的暴力」が+3%といわゆる妻のDVが増えていることを示しています。「精神的虐待」は全体の約2割で「性格の不一致」に続く夫からの離婚理由第2位です。

妻側は、「性格の不一致」に続き、「金銭的問題」が第2位。夫が働かない、借金をするなどの理由がこれにあたりますが、2010年と比較してほぼ変わりません。妻側の理由で増えているのは、「夫からの精神的虐待」で+2%ですが、「夫からの身体的暴力」は逆にマイナス10%と減少しています。

それでも「妻の暴力」より「夫の暴力」のほうが圧倒的に多いわけですが、いずれにしても、平時でさえ夫妻とも「パートナーからの精神的虐待」が離婚の原因として増えていることは明らかです。

自己を守るために相手を攻撃しがち

もちろん、夫婦である以上、時にはけんかすることもあるでしょう。しかし、平時であれば、決してしないような精神的に相手を追い詰める行動を、こうした非常事態には無意識に行ってしまうのです。それは、自分自身も追い詰められているがゆえ、自己を守るために相手を攻撃しがちです。

このような精神的虐待行動の呼び水となるのは、根本的な価値観の違いです。とくに、コロナの問題においては、価値観の二項対立論争に陥りがちです。いわゆる「命か経済か」という問題です。この論争の落とし穴は、いつのまにか「命か経済か」の二者択一論になってしまうことです。そうなるとややこしくなります。一度自分が「正しい」と信じ切ってしまうと、それと相いれない考え方をなかなか認めることができません。

それは、「自分が間違っている」という自己否定になるからです。それゆえ、徹底的に「相手が間違っている」と責めるようになります。それがエスカレートすると、相手の人格否定にまで発展します。人格否定を言葉にすれば、それはもう精神的虐待に等しくなります。

こうした負のループから抜け出す方法の1つは、「相手と向き合わない時間を作る」ことです。1日に短い時間でもいいので、とにかく「ソロでいる時間」を作ることが重要です。それは、ちょっと長めの距離の散歩でもいいと思います。1人になって、自分と向き合う時間というのは、狭くなった視野を拡大させ、主観でしか考えられない視座を客観視・俯瞰視まで高めてくれるでしょう。

先の見えない不安な毎日が続きますが、非常事態だからといって、家族が終始家族だけで団結しなければいけないと家族自体を追い込まないようにしましょう。

今は、誰とも一緒にいない時間と空間が、人間にとってどれだけ価値のあることかを個々人が再認識するきっかけと捉えてみてもいいと思います。そうすれば、アフターコロナ時代、逆に人とのつながりの大切さがまた違う色で見えてくるかもしれません。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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