柴田陽子「営業せずとも売れる」生き方の根底 どんなつらい体験も受け止め方次第で糧になる

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「私は、『恵まれていて、すべてが順風満帆』というイメージを多く持たれていたので、人にはいろんなことがあって、その時々の受け止め方次第で、どこにでも行けるということを、(自分の壮絶な体験を著書に)書くことによって信じてもらいたかったのです」

ギリギリの精神状態で過ごした経験があったことで、自分に厳しさを求めるようになっていると柴田は自覚する。そして、どんな苦境に立たされても、必ず次に向かえるようになるまで考え続ける、柴田が確立した「勝者の思考回路」の礎となったに違いない。

その後、柴田は秘書からネイルサロンの店長、新規レストランの開発など、畑の違う仕事を経てシバジムを設立するのだが、その根っこには会社員時代の苦い経験があった。柴田が企画から手伝った1軒の居酒屋が半年もすると「似て非なるもの」になってしまったことだ。

オープン当初こそ大盛況だったがプロジェクトを解散した半年後に訪れてみると、店の運営はズタボロになっていた。入り口にセロハンテープで貼られたポスター、大事な動線に置かれた掃除道具、チープな食器、残念な接客態度――。オープン時に従業員と共有できていたものがことごとく失われていた。

長く続けるほどに本当の価値が生まれるものを

ショックを受けた柴田は誰が悪いか考えてみたものの、運営側に悪気があってやっている人はいなく、誰も悪くはない。この経験から柴田は「オープニングで派手な脚光を浴びたいのではなく、長く続けるほどに本当の価値が生まれてくるものを作りたいのだ」と認識する。それが「ブランドプロデューサー」になると志した理由だった。

シバジムが手掛けるブランディングは、面白い広告やキャッチコピーで打ち上げ花火のように仕掛ける広告代理店のそれとは違うというのが柴田の考え。「企業の収益の柱となるような持続性のある強いブランドを作ること」「長く続けるほどに価値を高めるようなブランドを作ること」をモットーとし、その対象は商品、サービスだけでなくお店、商業施設、街にまでクライアントが「ブランドとして特徴づけをしたい」と考えるものすべてに及ぶ。

そしてシバジムは実際にそれらをいくつも成功させてきた。

ブランドに対する認識と、コンセプトの作り方を柴田に聞いてみた。

「ブランドというのは、情報がありふれた社会において、『それを受け取る人たちが、その価値を感情的に理解、評価して支持するもの』と考えています。

人は情報に振り回されすぎて、最終的に行きつくところは、『僕はやっぱりこのブランドが好きだ』とか、『このブランドを応援したい、欲しい』など“感情”で選ぶものです。取りつけたい感情を設定して、その感情を得られるように活動することがブランディングです。

コンセプト作りのポイントは、まず、取りつけたい感情を設定することです。

世の中に今一番受け入れられるもの、戦えるコンセプトと、自分たちが元から持っているものを少しアレンジして、加工します。そのコンセプトがいかに時代から受け入れられるかということが、勝てるか勝てないかの境目です」

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