アリババ「アマゾンすら凌ぐ」巨大市場の正体 手数料無料の大胆戦略で探り当てた鉱脈
新型コロナウイルスの感染拡大が世界各国で深刻化している中で、その震源地であった中国湖北省武漢市は4月8日、1月23日から実施していた事実上の封鎖措置を解除しました。
アメリカなどでは中国が初期の段階で透明性のある迅速な対応を取らなかったことに批判を強めています。私個人としても、同国が明白に十分な説明責任を果たしていない中で、感染拡大を早期に収束させたことを誇示するような態度を示していることなどについては遺憾に思っています。
一方で、中国の対応に目覚ましいものがあったことも事実でしょう。思い切った隔離政策が取られたことは周知のとおりですが、ここでも「中国らしい」監視的な最先端テクノロジーが活躍しました。
例えば、北京では、電車内での感染拡大を防ぐために地下鉄を予約制にしました。予約客はスマホでQRコードを見せて、改札を通ります。また上海では、オフィスビルに入る際に「健康証明」が求められるようになりました。同地では、その人の感染リスクを緑、黄、赤の3段階で表示する、というアプリが活用されています。感染リスクの判断には、アプリを通じて収集された移動履歴や家族関係などのデータが使われています。
さらに中国のメガテック企業は、コロナショックを最先端のデジタルテクノロジーの社会実装の機会へと転じようとしています。その代表格が、アリババです。アリババは、新型コロナウイルス対策として、AI診断システムの開発やアリババクラウドによる医療専門家コミュニケーション・プラットフォーム(特設サイト)の構築など、さまざまな取り組みを積極的に実施しています。
本稿では、そうしたアリババの取り組みの背景にある、同社の強みや特徴、その根底にあるミッションなどについて考察していきます。
世界の小売業界をアマゾンと二分する勢い
拙著『経営戦略4.0図鑑』でも詳しく解説していますが、アリババは、一言で言えば、Eコマースの会社です。2019年3月期の売上高は、538億ドル(1ドル=7人民元で換算。以下同)でした。日本円にすると、5兆9180億円です。そのうち、アリババが「コアコマース」と呼ぶ、オンライン上のEコマースでの売上高は462億ドル(5兆820億円)なので、全体に占めるEコマースの売上高は86%です。
アリババとライバルのアマゾンを比較してみましょう。アマゾンの2019年12月期の売上高は2805億ドル(30兆8550億円)なので、アリババの約5倍です。そのうち、アマゾン直販のオンラインストアと、第三者が販売する「マーケットプレイス」を足した売上高は1950億ドル(21兆4500億円)で、やはりEコマースでもアリババより5倍近い売り上げであることがわかります。
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