アリババ「アマゾンすら凌ぐ」巨大市場の正体 手数料無料の大胆戦略で探り当てた鉱脈

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この数字だけをみるとアマゾンの圧勝のようですが、別の基準でみるとアリババの巨大さが浮かび上がってきます。その基準とは、「流通取引総額」です。流通取引総額とは、ユーザーに購入される商品やサービスの販売総額を示す数字で、Eコマースというプラットフォーム上で発生しているエコシステムの規模を表しています。

(出所)『経営戦略4.0図鑑』(SBクリエイティブ)

とくにマーケットプレイス型のEコマースやフリマアプリを運営する企業においては、市場の規模を測定する重要な指標とされています(海外企業の決算資料では「GMV(グロス・マーチャンダイズ・ボリューム)」と表記されます)。アリババの中国国内における2019年3月期の流通取引総額は、個人向けだけでなんと8530億ドル(93兆8300億円)でした。

一方のアマゾンはデータを公表していないので、マーケットプレイスの流通取引総額を売上高から推計すると、5380億ドル(59兆1800億円)になります。この数字にオンラインストア分(=売上高)を加えると6792億ドル(74兆7120億円)になります。したがって、流通取引総額においては、完全にアリババがアマゾンを上回っているわけです。

アマゾンのEコマースは、直販型が主体です。アリババは、マーケットプレイス型と業態が多少異なるものの、アリババの流通取引総額は世界的にみて突出した規模の大きさです。

日本国内最大のEコマース企業である楽天は、マーケットプレイスが主体のアリババに近い業態となっていますが、2019年度12月期の国内における流通取引総額は3兆9000億円でした。この額には、「楽天市場」に加え、トラベル、ブックス、チケット、デリバリー、ラクマほか、Eコマース上のすべてのサービスが含まれています。アリババの20分の1以下の数字にすぎないことを考えると、改めて、アリババの巨大さに驚かされます。

「アリババドットコム」を無料で提供

アリババの創設は、1999年にさかのぼります。創業者のジャック・マー氏が最初に始めたビジネスは「BtoB」(=企業間取引)のEコマースである「アリババドットコム」です。アリババが成功したのは、中国市場でいち早くEコマース事業を立ち上げた「先発優位」にあったからだと思われがちですが、実はそうではありません。

「先発優位」というのは、新しい市場に早期に参入して得られる“先行者メリット”です。アリババドットコムが始まったときには、すでにほかのBtoBのEコマースが稼働しており、先発優位にはなかったのです。また、アリババを設立したばかりのジャック・マー氏には、これといった企業家としての実績もなく、とくに注目されていた存在でもありませんでした。

そんな状況の中、マー氏は、アリババドットコムの手数料を無料にすることで、ユーザーの獲得を狙ったのです。マーケットプレイス型のEコマースは、取引が成立したときに手数料を徴収するか、もしくはEコマースを利用するために会員となる際の会費によって収益を上げるというモデルが一般的です。当初のアリババドットコムは、そうした手数料をすべて無料にしたのです。

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