アリババ「アマゾンすら凌ぐ」巨大市場の正体 手数料無料の大胆戦略で探り当てた鉱脈
アリババが展開しているEコマースは、BtoBのアリババドットコム、CtoCのタオバオ、BtoCのTモールなどさまざまですが、いずれもアマゾンのような直販型ではなく、第三者が販売するマーケットプレイス型になっています。マーケットプレイスを事業の主体としている背景には、アリババのミッションがあります。それは、「社会的問題をインフラで解決する」と「中小企業や消費者を支援する」です。
中小企業や個人経営者の事業を支援する社会的なインフラとして、Eコマースを構築しているのです。決済サービスとしてのアリペイも、銀行口座やクレジットカードを保有していない人が多いという、社会的な課題に応えたものといえます。そうしたアリババのミッションが反映された、最近のわかりやすい事例があります。それは、2017年から始まった「天猫小店」です。アリババのリアル店舗におけるプロジェクトで、家族経営のような零細小売店を“デジタル化”するという試みです。
零細小売店の「デジタル化」
具体的には、零細小売店に対して、Eコマースを中心としたネットインフラや物流システム、店舗が存在している地域の消費動向データなどを提供します。世界中で起きていることですが、零細小売店はどんどん淘汰されています。過去には大型スーパーやコンビニの台頭、そして、現在ではEコマースによって、廃業に追い込まれた店舗は数知れません。中国には600万を超える零細小売店があり、そうした店舗の店主の80%は、45歳以上といわれています。
アリババは、中国で廃業する店舗が続出する前に零細小売店をデジタル化し、実質的にフランチャイズチェーン化することで存続させようとしているのです。同時に、天猫小店の拡大は、アリババがこれまで手薄だった地方の小都市の消費データの入手にもつながります。これまで、ほかの企業もなかなか手が届かなかったデータが蓄積されることで、中国全土を経済圏とすることに寄与するでしょう。
実は、天猫小店よりも前から、アリババのリアル店舗の事業はスタートしていました。それが、2016年に第1号店が上海市にオープンした「フーマー・フレッシュ(盒馬鮮生)」です。北京市や深圳(しんせん)市ほか中国各地に150店舗を展開しています。
フーマー・フレッシュは、生鮮食品を主体としたスーパーで、リアル店舗ですから店頭で実際に購入できます。加えて、スマートフォンから商品を注文して宅配をしてもらうことも可能です。店舗から3km圏内であれば、30分以内に無料で届けてもらえます。店頭で実際に食品をみて(あるいは触って)確かめたものを宅配してもらってもよいですし、店舗に出向かなくても自宅から注文もできます。
フーマー・フレッシュは、ネット上のオンラインとリアルのオフラインを融合させた、いわゆる「OMO(Online Merges with Offline」の店舗となっています(「merges with」とは併合するという意味です)。
フーマー・フレッシュの店内では、あらゆる商品にQRコードが貼られています。水槽の中を泳いでいる生きた魚にまで付いているほどです。スマートフォンでQRコードを読み取ると、値段だけでなく、産地や流通経路などもわかります。アリペイで購入すると、スマートフォンのアプリを通じて来店履歴や購入履歴が、アリババに蓄積されていくという仕組みができあがっているのです。
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