3月18日西アフリカに位置するブルキナファソの保健当局の発表では、国内の感染者が7人増えて27人になったと発表し、そのうち1人は糖尿病の62歳女性で、前夜に死亡したことが報告された。この死亡した女性に関して、ブルキナファソの最大野党・進歩変革連合(UPC)は、ブルキナファソの議会のローズマリー・コンパオレ(Rose-Marie Compaore)第1副議長と明らかにされたのである。
通念上は、一般市民の感染、死亡が先行するように思われたが、政府の要職なる人物が最初の犠牲者となったことは何かを意味しているように思われた。
無論、政府の要職にある人物は、外遊の頻度も高く、諸外国からの訪問者との接触が多いことが背景要因としては考えられるものの、アフリカにおける感染に関する検査の能力不足と、援助関係者を含む外国からの訪問者と、政治エリートの検査が優先されざるをえないという事情があったと考えられる。
実際、アフリカにおいては2月までは、新型コロナウイルス感染の検査ができる機関は、南アフリカと西アフリカのセネガルにしかない状況であった。現在は40カ国にまで拡大はしている。
こうしたアフリカでの感染拡大に関して、自らエチオピアの保健相と外務相を歴任して、現在WHOの事務局長として、今回の新型コロナウイルス感染症対策を指揮するテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は、ブルキナファソの議会の第1副議長の死亡を受けた3月19日のジュネーブでの記者会見で、アフリカ大陸に「最悪の事態に備える」よう呼び掛けた。
また、この会見の中では、アフリカにおける感染者の数値について、「おそらく見逃されている感染者や、報告されていない感染者がいるだろう」と指摘している。今回の新型コロナウイルスでは発症が抑えられる傾向にあるともされる若年層の人口比率の高いアフリカにおいては、無症状の感染者が水面下で拡大している懸念を払拭できない。
今後の課題
新型コロナウイルスは、その感染経路を考えると、人口が密集し、水道などの設備が不足するようなアフリカ都市部のスラムにひとたび感染者が出ると、爆発的な感染拡大が懸念される。
実際、BBCの取材に応じている、ケニアの首都ナイロビにあるケニア最大のキベラ・スラムの人々の声にも示されているように、アフリカの都市部には、人口密集地域であることに加え、清潔さを保つための水道やせっけんが不足している住民が極めて多い。
これは、紛争に伴う強制移動を余儀なくされている難民や国内避難民キャンプにも当てはまる。しかも医療体制についても、南アフリカのように比較的高い水準の体制を整えている国もあるが、住民1000人当たりの医師の数も日本の2.4人に対し、アフリカではその10分の1以下の0.2人にとどまる(世界銀行統計)。
こうしたことから、重症化する患者が増大することが現実のものとなれば、医療崩壊は免れない。今後、アフリカなどの途上地域への医療支援などが新たに課題となってくる。
アフリカは、今回の新型コロナウイルス感染症が遅れて到達した地域である。しかし、この地域での対応が、その終息に向けた試金石になるとともに、2021年夏への延期が現段階で決定した東京でのオリンピック、パラリンピック
開催実現に向けた最後のカギを握ることにもなる。
なぜなら、陸上の中・長距離種目で、世界最高水準の選手を排出する「アフリカの角」からの参加のないままに、「完全な形での開催」は実現しないからである。
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