3月26日午前8時、(武漢市の)漢正街に住む劉萍(リウピン、仮名)は、社区(訳注:団地のようなコミュニティー)の担当者に案内され、武漢市漢口葬儀場に到着し、長い長い列に加わった。亡くなった父の遺骨を受け取りに来てもよいとの通知を、前日の午後に受け取っていたのだ。
漢口葬儀場には、200メートル近い長蛇の列が2つできていた。3月23日、武漢では新型コロナウイルスで亡くなった人の遺骨を各葬儀場から受け取ることが許可された。それ以来、葬儀場や共同墓地では、こうした行列がよく見られる。
「父は新型肺炎に間接的に殺された」
劉萍の父は脳腫瘍で入院していた。だが、1月末に病院が新型肺炎患者を治療するために病室を空にした。父は家に帰るしかなかったが、自宅には治療環境がなく、病状はますます重くなっていった。
病院は3月初めに外来診察を再開。父はようやく再入院することができたが時すでに遅く、数日後に亡くなった。「この病気は本当に人を害するものだ。父は新型肺炎で死んだわけではないが、間接的に殺されたのだ」(劉萍)。
午後2時になり、劉萍は父の遺骨をようやく受け取った。そばで待っていたボランティアは黒い傘を持ち、劉萍を葬儀場のホールから送り出した。静けさに包まれたホールでは、時折かすかにすすり泣く声が聞こえてくる。「私の涙はすっかり枯れてしまった。今はただ、父の後事をきちんと終えたいだけだ」と劉萍は話す。
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