武漢の作家が語った「都市封鎖」60日間の惨状

900万人の被災者たちが心に負った傷は深い

方方は武漢在住の有名な小説家。都市封鎖下でのブログは当局によりたびたび削除され、世界的な注目を浴びた(財新の資料写真)
新型コロナウイルスの感染拡大により、中国の市民は生活や仕事を大幅に制限された。その期間、大陸全土の中国人が深夜や起床後に日課として読んでいたブログがある。都市封鎖(中国語で「封城」)された武漢在住の小説家である方方(64歳、本名は汪芳)は、厳しい状況に置かれた武漢の日常や関連当局への批判などを日々つづり、中国内だけでなく欧米メディアからも注目された。財新の取材班は最終回を書き終えた方方に独自インタビューを実施している。

3月25日午前0時22分(現地時間)、作家・方方の封城日記・最終回「わたしは、戦いを立派に戦い抜いた」が更新された(財新ブログ内)。2020年1月25日の年明けから3月24日に武漢市が都市の封鎖を4月8日に解除すると宣言するまで、約60日間、方方は毎日日記を更新し、この歴史的な災難についての記録を行った。

本記事は「財新」の提供記事です

彼女は最後に『聖書』の中にある使徒パウロの一節、「わたしは、戦いを立派に戦い抜き、決められた道を走りとおし、信仰を守り抜きました」という言葉を引用した。最終回を執筆し終えると、方方は電子メールで財新からのインタビューに応じた。今回の感染症との戦いや自身の記録について、そして知識分子(インテリ層)と武漢の一連の問題について以下のように回答した。

財新記者:最初に武漢で新型コロナウイルスが発生したと聞いたのはいつですか?

方方:2019年12月31日のことです。私の一番上の兄が情報を入手しました。私たちは私と3人の兄の4人だけのグループチャットを持っています。普段からみんなで連絡を取っていましたが、主な話題は家庭内のことでした。12月31日午前10時、長兄が「武漢で原因不明の肺炎発生の疑い」という論文を送ってきました。

さらにカッコ書きで“SARS”とも書かれていたのですが、兄も「本当かどうかわからない」と言っていました。それを見て、私と次兄ですぐにみんなに「外出しないように」と忠告しました。その後再び長兄が、この情報が真実であったこと、そして国家衛生健康委員会の専門家がすでに武漢に到着しているという情報をシェアしました。

政府は情報を隠蔽しないと思っていた

三番目の兄は最初に感染爆発が起きた華南海鮮市場付近に住んでいたので、彼には当面は病院に行かないようにと言いました。しかし彼は外を見てみても、漢口(訳注:武漢市の北部地区)の市中心病院はいつもどおりだったと話していました。

それから、同級生間のグループチャットで華南海鮮市場と中心病院の状況がわかる動画を見ました。すぐに家族とのグループチャット内に転送し、三番目の兄に外出する際はマスクをすること、元日以降は私の家に来ることを勧めました。

私が住んでいた江夏(訳注:武漢市の南部地区)は郊外で、漢口から離れていたのです。三番目の兄は「状況を見てから考えよう」と言っていました。次兄はあまり怖がりすぎることはないと考えていました。市民のために、政府も情報を隠蔽することはないだろうと思っていたのです。

私も基本的には次兄と同じ考えでした。これだけの一大事ですから、政府が情報を隠蔽し、市民に真相を知らせないなんてあるはずがないだろうと信じていました。元日の午前、長兄が再び「華南海鮮市場の営業が停止した」という『武漢晩報』のニュースをシェアしました。それでも三番目の兄は「この辺はまだ何の変化も起きていない。みんなそれぞれやるべきことをやればいいよ」と話していました。

ただ一般の市民として、この日には私たちはこの件をかなり重要視していました。講じていた措置は、マスクを着けたり、家に籠って外出を控えたりと、今と変わりません。恐らく他の武漢市民も私と同じだったと思います。SARSの恐ろしさを経験していますから、誰もこのニュースを軽視することはできなかったはずです。

次ページ封鎖直前に武漢から逃げ出した人々も
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