武漢の作家が語った「都市封鎖」60日間の惨状

900万人の被災者たちが心に負った傷は深い

財新記者:多くの人はあなたの日記を戦場日記として読んでいるそうです。日記内では最前線での救援状況や感染症拡大の関連情報に言及し、多くの情報はあなたの友人や親族からきたものでした。あなたは直接、医療現場に赴いていないのに、どのようにこれらの情報を取捨選択して日記に書いたのですか?情報を選択する基準は?

方方:戦場日記ではありません。その位置づけは間違っています。これは被災者日記です。私も武漢の被災者の1人です。特に基準はなく、思いついたことを書いただけです。情報はどこでもあります。ネットはこんなに広くて、毎日人がおしゃべりして、自分の身の回りの話をしています。もちろん、専門的なことは医師に聞きます。

このような個人的な記録において、さらに重要なのは個人的な感覚と個人的な視点であり、それは記者の報道とは異なるものです。任務ではなく、責任感や上からの要求も存在しないので、自由にできるのです。

誰かの歓心を買うために書いたのではない

生活にはもともと多くの些細なことがあるので、個人の日記ではそれらを避けられません。情報が厳密ではないところはあるに違いないですが、多くはないと思います。例えば雷神山病院(訳注:新型コロナウイルスの患者受け入れを、2月5日に開始した武漢市江夏区の病院)の屋根が何枚か吹き飛ばされたときに、私は火神山病院(訳注:2月3日に開院した武漢市蔡甸区の病院)と書き間違いましたが、核心的な部分は間違っていません。

財新記者:あなたを(政府に対する)批判者だと思っている人がいますし、(市民の)弁護人だと思っている人もいます。ご自身の視点をどのように認知していますか?

方方:1人の個人的な記録で、しかも日記式の記録ですから、それほど大げさなものではありませんよ。私はずっと実事求是(訳注:本当のことや真実を求めること)を強調しています。批判すべきことを批判し、弁護すべきことを弁護しただけで、誰かの歓心を買うために書いているわけではありません。一般人の感染地域での記録にすぎないと位置づけてもらえばいいでしょう。

財新記者:日記の中では初期の感染予防対策のミスに対する批判もしていますが、(当局の)関係部門の不興を買うことは怖くないですか?また、あなたの日記にはいくつかの官僚の苦労も書いてあります。あなたが官僚を弁護していると思っているネットユーザーもいます。あなたはこのような批判をどのように見ていますか? あなたは、かつての体制側の人間(訳注:方方は湖北省作家協会の主席を長く務めた)として、官僚の友人がたくさんいますが、この期間に友人が話を聞きに来たことはありませんか?

方方:彼らの不興を買っていることが、私といったい何の関係があるのでしょうか?私はこんなに長く家に閉じ込められています。900万人の武漢人は外出できないし、(封鎖前に市外に出た)500万人の武漢人は家に帰れない。こんなにも多くの被災者がいます。関係部門はまず武漢人の機嫌がいいかどうかを考えるべきです。

一部のネットユーザーは官僚の細かい動きにこだわっています。例えば字を読み間違えたこととか、市長の帽子がどうだ(訳注:1月27日、李克強首相が武漢を視察した際に、李首相が帽子を着けていないのを見た武漢市長があわてて帽子を脱いで官僚に渡したこと)とか。これらは大したことではなく、全力で感染防止対策をしている最中にはやめていいと思います。私たちが追究しなければならないのはもっと大きい事です。

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