中国当局はなぜ新型コロナ記事を削除するのか 武漢医師のインタビュー封殺に「網民」が反旗

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武漢で早期に新型コロナウイルスへの警告を発していた李文亮医師は2月7日に死去(写真:AP/アフロ)

中国政府は新型コロナウイルスとの戦いをCCTV(中国中央テレビ)などの国営メディアを通じて喧伝すると同時に、ネットではかつてないほど厳しく言論を取り締まっている。

武漢に在住する女流作家の方方(ファン・ファン、64歳)は、武漢閉鎖から54日目となる3月16日深夜に新浪ブログで、同じ作家でドイツ在住の厳歌苓(イエン・ゲーリン)が書いた文章がネットから削除されたことに触れてつぶやいた。

「友人に転送しようと思っていたのに、もう削除された。ご承知のとおり、ここでは欺瞞に満ちた(当局の)担当者がまず文章を削除する。われわれは削除という行動に対して、茫然となっているだけ。自分がネットで書いたものはいつ、何が違法だったのか。これはいままで誰からも教わったことがなく、受け入れるしかなく、受け入れざるをえない」

方方は有名な小説家であり、長く湖北省作家協会の主席を務めてきた。新浪ブログのフォロワーは3月現在408万人で、書いた小説を直接読んだことはなくてもその一部はテレビドラマ化されており、多くの人々が見ている。中国では知名度と影響力のある文化人と言える。

著名人物の公開日記をいとも簡単に削除

1月23日の武漢閉鎖以降、彼女は小説の執筆をストップし、厳しい状況に置かれた武漢の状況を日々、自身のブログ「方方日記」につづってきた。

「ここ数日、死がますます近寄ってきているようだ。隣のいとこがなくなった。知り合いの弟もまた死んだ。友達の両親と奥さんがそろって他界している。武漢市は血と涙の都市になり、辛酸極まっている」(2月13日の日記)

「武漢には湖北日報グループと長江日報グループがあるにもかかわらず、市民にはまったく(警鐘の)笛を吹かなかった。二大メディアグループのトップは、そろそろ辞職すべきではないか」(3月15日の日記)

新浪のサイトで武漢が閉鎖されてからの彼女のブログを調べると、2月5日から2月24日の間は欠如している。その期間に日記を公開しなかったわけではなく、新浪によって削除されていた。2月25日から方方がブログでの日記公開が許されると、今は少しずつそれを更新している。

方方のような著名人物の公開日記をいとも簡単に削除するなら、普通の人々は自分のつぶやきがなぜ日常的に削除されているのか、まったく理由がわからないのは当然だ。

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