インドネシアでも感染者が増えている新型コロナウイルス。感染拡大を阻止するために政府や地方自治体が次々と打ちだす対応策が、指示から1日で変更されたり、地方自治体が日本企業を中心とする外国企業を狙い撃ちしたとしか思えない方針を、政府方針に反して示したり、市内の店先から生活必需品が消えたりと混乱が続いている。
背景には3月2日に国内でインドネシア人の感染者が初めて確認されるまでの期間、周辺の東南アジア各国で感染者や死者の数が増加していく状況を「対岸の火事」のように高みの見物をして十分な準備、対策を講じてこなかったことがあるといえる。
自虐的冗談を疑問視する声もないほどに
当時は「雑菌感染が多いインドネシア人にはウイルスの耐性がある」「平均気温31度の熱帯気候がウイルスの繁殖を抑えている」「食品はなんでも油で揚げて食べるので感染の可能性が低い」などと自嘲気味にゼロを誇っていたものだった。
一方で「中国人観光客も多いバリ島などがあるのに感染者ゼロはおかしい」「医療水準が低く検知できないだけではないか」などゼロを疑問視する声が国際社会から出ていたのも事実だ。
しかし、初の感染者が確認された2日以降、感染者数は急増し続けており、18日現在で感染者227人、死者は19人となる状況にこれまでの「ツケ」が相乗効果となり混乱が極に達しようとしている、もはや自虐的冗談も疑問視の声も出ないくらい対策に大わらわの状況が続いているのだ。
周辺国は対策を急いでいる。フィリピンは15日からドゥテルテ大統領の強い指導力でマニラ首都圏の事実上の「都市封鎖」をはじめ、17日にはそれをマニラのあるルソン島全域に拡大。全域で住民に自宅待機を命じ、移動も禁止するというさらに厳しい措置を打ち出した。
また、ASEAN域内では感染拡大の初期の段階から厳しい監視、検査態勢を確立して自国民保護に最大限の効果をあげているシンガポールは都市封鎖には踏み切っていないが、日本人を含む入国者には14日間の「自主隔離」を求めており、その隔離状況を厳しく監視することで国外からの感染を可能な限り抑えこもうとしている。
こうした中、インドネシアはジョコ・ウィドド大統領が15日に「仕事、勉強、祈りもすべて自宅で行うように」として学校の休校などを打ち出した。「パニックにならず生産性は維持するように」と呼びかけながらも指示は強制力を伴うものでなくあくまで「外出の自粛」にすぎない。
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