コロナに狼狽する「インドネシア政府」のマズさ 「感染者いない」と高みの見物をしていたツケ

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こうした政府や、ジャカルタ州知事のてんてこ舞い振りが伝えらえる中、中部ジャワ州のガンジャル・プラノウォ知事は、住民の感染への不安を解消するためとして18日から州内の指定病院で検査を無料で実施する方針を明らかにした。

ガンジャル知事は普段から率先して市民の間に飛び込み、生活状況や州政府への不満を聞いたり、州政府の事務所を突然訪れて職場にいない職員を呼び出したり、職務怠慢の職員を叱責するなど行動派として知られる。2024年の次期大統領選挙での有力な大統領候補の1人と目されている。

このほか、与党闘争民主党(PDIP)が独自に無料の診断を提供する準備を進めるなど、「もはや国の対策を待っていられない」という動きもあちこちで広まっている。

そんな中、17日にはジャカルタの東方郊外にある西ジャワ州カラワン県の県庁が、カラワンに居住する外国人に対して①インドネシアに新たに入国した外国人の14日以内のカラワン県への立ち入りを禁止。また、すでにカラワン県に在住している外国人の海外への出国を禁止、②14日以内にカラワン県に在住している外国人のメディカルチェック、報告を要請、③県内すべての会社に消毒液・マスク用意などの防止策を要請、④カラワン警察から県に対して県内在住の外国人の把握を要請――という内容の通達が出るという情報が飛び交い、困惑が広がっている。

日本企業は在宅勤務へシフト

カラワンの工業団地はトヨタ、ダイハツ、アイシングループをはじめ自動車関連の日系企業、工場が集中していることで知られており、多くの在留邦人が居住、勤務していることから「日本人を対象にした通達か」の疑心暗鬼が広がっている。

この通達が効力を発すると、カラワン県工場や事務所のある日系企業、工場への日本からの出張者の訪問、日本への出張が制限されることになるほか、医療施設での検査とその結果報告が義務付けられることにもなり企業活動への影響は必至という。日本大使館などでは、「このカラワン県の通達は大統領の発表した方針に反しているようにもみえ、実効性には疑問もある」として事態の推移を注目している。

ジャカルタ市内の日系企業などでは、外出自粛要請を受けて従業員や日本人の在宅勤務シフトへの移行を始めている。大手商社は各部署を2チームに分けて、隔週で1チームを出勤、1チームを自宅勤務とすることをすでに試行し始めているほか、外資系企業の日本人社員は、16日から当分の間、完全在宅勤務態勢になったという。

ジャカルタ市内の小中高校などの教育機関、公共の博物館や施設、主要な観光地は15日からすべて閉鎖されている。ジャカルタ中心部の独立記念塔(モナス)や、北部コタの観光地「ファタヒラ広場」は立ち入りそのものが禁止されているため、閑散として警備員の姿だけが目立つ状況となっている。

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市内のコンビニエンスストアーやスーパーマーケットなどからはマスクに加えてトイレットペーパー、ティッシュペーパーも姿を消すか、購入個数制限の品薄状態が続いていた。さらに15日からの外出自粛養成を受けて、米、生卵、薬品までもが売り切れの状態となっている。

世界での感染者・死者数が増え続ける中、インドネシアでも確実に数字は増加しており、一刻も早く、堅実かつ確実、そして国民の理解を得られる対応策を打ち出すことが求められている。感染症の拡大が広がる中、イスラム教徒の多くが口にする「感染するもしないもすべてアラーの神次第」では感染者を救うことはできないのだから。

大塚 智彦 フリーランス記者(Pan Asia News)

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おおつか ともひこ / Tomohiko Otsuka

1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からはPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材執筆を続ける。現在、インドネシア在住。著書に『アジアの中の自衛隊』(東洋経済新報社)、『民主国家への道、ジャカルタ報道2000日』(小学館)など。

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